ベロニカは死ぬことにした

ベロニカは死ぬことにした
パウロ コエーリョ (著), Paulo Coelho (原著), 江口 研一 (翻訳)
以前読んだ『アルケミスト』の著者の作品というので手にした。他にもいくつかある著作の中でこれを手にしたのは人の内側について濃く書かれていそうな気がしたからだったと思う。
普通とは何か?普通ではない(狂っている)とは何か?について考えさせられる一冊。
精神に異常をきたしているものと、通常であろう人間に判断されて精神病院での生活をしている人間個々の心の機微、交流による変化の過程が描かれている。
事象の捉え方や捉えた事象に対して選択する反応が”普通”と異なっていたり。その背景には自分の精神のキャパシティが極度に小さくなっていたりインプットを拾うアンテナの感度が極度に高くなっていたり。
各人の普通であった?過去から現在に至るまでの流れを追っていくうちに何が異常で何が正常なのかというのが曖昧になっていくように感じる。そもそもデジタルに判断できるものではないのだろうけど。
そんな彼らを治す側の立場の意図にも触れることができる。新たな治療法を見出すための被検体として捉える視点、ひとりの人間個人として捉える視点。両者のバランスが見事に取れているシーンを見ると少し”異常”だと感じる部分もあるし、一方でバランスをとりかねているシーンを見れば、その医者を”通常”だと感じる部分もある。
その判断がいかに主観的であり、またその主観が自分の過去であり今の環境でありのコンテクストにおける価値観に影響を受けているのかを感じることができる。

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