勝負は既についている -人が立ち返る場所

不測の事態に見舞われ混沌とした状態に陥った時に企業運営の成否を分かつのは、そうなる前に何をしてきたか、何を価値観として行動規範として自分たちの心に刻んできたかである、という話。

以前所属していた組織ではプロトコルが明示的にも暗黙的にもあったように思う。それがあるからコミュンケーションのロスが少なく効率的に物事を進められた。

それを持たない経験はMBAでのチームワークが大きい。こちらにまとめている(プロトコルという言葉を使っていないが)。

2nd TermのクラスとMBAとコンサルティングのチームワークの違い3つ

英語だったということもあったが慣れるまでむつかしかった。プロトコルがあるという中に、それを具体的にどういうシーンでどう使うのか、共にしてきた経験があるということも含んでいるのだと思う。

ただ、物事を進めるのをむつかしくするインパクトは、プロトコルの有無は小さく、それよりに大きいのが価値観が共有されているか、という点にあると感じている。例えば上記のリンク先で言えば、何を最も重要視するか、優先順位の置き方は価値観の1つに当たるだろう。

 

多様なバックグラウンドを持つプロフェッショナルが運営する、プロトコルを持たない組織が不測の事態に見舞われ、情報の連携がとれず事実関係が不確かな中で行動することが求められた。

結果として、後から振り返れば組織としてうまくまとまった行動がとられていた。当時を振り返る会話の中で共通してでてきたのが、意思決定をするとき、それに従い行動している時、振り返ったのは自分の行動が共有している価値観にそぐうものであったか否かであったということだった。

共通の価値観というものは、ある時決めたらその日から根づくようなものではない。文字に起こして配ればそれがそのまま価値観なるものでもない。仲間の日々の言動と一致してはじめて組織の価値観となる。

なので、勝負は不測の事態を迎える前にすでについていたのだと。

 

自分であり自分たちでありの日々の言動がどのような価値観に根ざすものなのか、そしてそれがふさわしいものなのか。そこに齟齬なく生きていきたい。

[書評] なぜローカル経済から日本は甦るのか

この書籍の中で筆者はグローバル経済とローカル経済を明確に分類する。そして近年注目されているグローバル経済での成長をどれだけ求めてもそれはローカル経済へのトリクルダウンを起こさないということ、日本はローカル経済の割合が大きくグローバル経済を強化してもそもそもインパクトが小さいこと、それら両経済圏における競争ルールは全く異なるものでありそれらを強化するに際して政府に求められる役割も企業・経営者に求められる行動も異なること、ではそれぞれの経済圏においてどのような時間軸で誰が何をどうしていくべきなのか、を明快に語る。

ローカル経済の重要性を語る中で、筆者はグローバル化が加速するにつれてグローバルとローカルの2つの世界の遊離が加速する、グローバル化が進めば進むほどかえってグローバル経済圏から切り離される人が多くなる、グローバル化のパラドックスが起こっていると言う。

そして付加価値構成に分解して考えれば、非常に大きな割合がローカルな世界で生産され消費されていることに触れる。

また、Tradable goods(貿易財)とNon-tradable goods(非貿易財)の違いにも触れ、グローバル経済圏は前者を扱う大企業が中心であるのに対して、ローカル経済圏は後者を扱う中堅・中小企業が中心となることを定量面からも示す。

そしてその各経済圏において日本の政府、企業・経営者、個人はどのようにふるまうべきなのかの持論が展開される。

その内容の濃密さから得るものも多いが、それ以上に驚くべきは筆者の広範な知識と深い洞察であると感じた。経営・経済・法律・金融会計等広範な学問領域を縦横無尽に跨ぎ、かつその全てが自身の経験に結びつき一切学問的な内容にとどまらずに肌感覚をもって論じられるというのは並大抵のことではないだろう。

じっくり、呼吸の仕方を確かめるように

今月から新しい仕事を始めて初めての週末。これまでにない幅広いインプットを蓄積してきた2年間を明けての仕事は、現役時代と比べればまだまだと感じる。頭の回転の速さ然り、手を動かす速さ然り。

今のうちに、じっくりと、呼吸の仕方を確かめるように仕事をする。

ものごとの時間軸とその時々の優先順位を見誤ることなく、
ロジックに甘え将来へ想像力を働かせることを怠ることなく、
新しい現実を自分の過去の経験で頭ごなしに否定することなく、

しなやかに取り組んでいきたいと思う次第。