外資系コンサルタントの企画力: 「考えるスイッチ」であなたの思い込みを覆す

前職でお世話になったパートナーの書籍であり、手にした。発売程なく購入し、最近ようやく読了。少し時間が出来たので今のうちにインプットを増やしたいなと。

読んでいると、彼がこの内容を語っている姿がありありと浮かぶ。自然で平易な言葉を選び、彼独特視点の鋭さあってのメッセージに面白さを含ませて相手に届ける。やろうと思っても、なかなかできないことだ。

コンサルティングファームのパートナー兼グローバルで規模の大きい事業会社のいちエグゼクティブとして活躍してきた彼の言葉は、ハンズオンのスタイルを標榜するファームで活動している今の自分に対して、昔よりも示唆に富んでいるように感じられた。

今もなお、むしろ今になって昔以上のスピードで、彼は・進化していると聞く。

方向であり内容でありはさておき、少なくともそのスピードで負けていてはならないなと、彼の過去の一部であるこの書籍から多くの学びを得つつ、感じる次第。

自分にとって学びとなった幾つかのフレーズを以下に抜粋する。

P24
承認されなければ、そのアイディアはなかったものと同じだ。アイディアが大きいほど、その承認までの筋道の設計は重要になる

P104
いきなり新しいものをつくろうとしなくても、いままであるものにストーリーをつければ人はワクワクする。そして、その実行の健全性を数字で常時管理できるようになれば、人はそれに合わせて動き出し、工夫を始める。

P160
まず必要なのは「責任」の設計だ。

P196
私は、企画書、特にエグゼクティブサマリーのとりまとめ作業が来るたびに、それを「第二の構想作業」が来たと、ため息をつきつつ覚悟をする。今度は、脳がどんな新発見をするのだろうかと楽しみにしつつ、その内容により発生するであろう構想作業の大修整に怯えている。だが、悪いことではない。

P209
企画の「背景」こそが、企画の「説得力」を大きく左右させる

P236
「心の導線」を敷き、それに沿って経営者の思考や心情を変化させていく。(中略)「5つの不を破る」と考えることだ。5つとは、不知、不信、不要、不急、不経済のことである。

P267
自分の心の中のレビュアーは意識して極端に「意地悪」でなければならない。反対のための反対者だ。

[書評] ZERO to ONE -君はゼロから何を生み出せるか

FacebookのTimelineを不意に流れてきて、気になったので手にした1冊。Peter Thielという著名な起業家のスタンフォードでの起業講義録とのこと。

読み終えて感じるのは、この本の価値は読む人によって価値が大きく変わるだろうということだ。

Start upに関係する人からすればこの本は極めて濃密で学びにあふれている。

起業に対する彼の考えであり、その背景にある世界観・価値観でありは新鮮にしてシンプルだ。それに従って彼が問いかける質問は、同じくシンプルでありながらこたえることの難しい、素晴らしいものだ。その問を得られるだけでも大きな価値だ。

本書の内容はそれにとどまらない。


競争そのものをよしとせず、独占企業について説く。その特徴は、どれも起業する上で考え無くてはならないものだろうと思う。それは、

1. プロプライエタリ・テクノロジー
2. ネットワーク効果
3. 規模の経済
4. ブランディング

の4つだ。

プロプライエタリ・テクノロジーはビジネスの最も根本的な優位性であり、例えばグーグルのアルゴリズムだ。独占的な優位性をもつには少なくとも二番手より10倍は優れていなくてはならないとする。

ネットワーク効果は、利用者の数が増えるに連れて、より利便性が高まる現象を指す。SNSを想像すれば分かりやすい。ここで注意スべきは、ネットワーク効果は強い影響力を持ちうるが、ネットワークが小規模であるときの初期ユーザーにとって価値が有るものでない限り効果が広がらないということだ。簡単に言えば、”規模が大きくなれば”価値がでる、ではだめだということだ。

規模の経済は説明は不要だろう。スタートアップで大切なことは、規模拡大の可能性を最初のデザインに組み込むことだ。

ブランディング。これに関して大切なことは、ブランディングで表面をどれだけ磨いても、そのしたに強い実体がなければ上手くはいかないということだ。

そして、スタートアップが実際に独占を築くためにどうすべきかという点も論じられている。

個人的に特に頷いたのは、”破壊しない”ということだ。破壊にこだわるということは古い価値観でありそれに従う企業にこだわるということだ。それより想像に注力することがはるかに有益だと喝破する。また、破壊は注目を集めやすく、それを大々的に言ってしまう企業は結果として勝てない喧嘩を売ってしまう(例としてナップスターを挙げている)。なので周辺市場に拡大する計画を練る時には、破壊してはならない。できるかぎり競争を避けるべきだ、とする。

多くの人は前例をもってこれを学んでいると思う。


そして0から1を生み出すために必要な隠れた真実を見つけるということに対して、現代はそうすることへの探究心を根っこから摘み取ろうとしていると警笛をならす。それは、漸進主義によって、リスク回避によって、現状への満足によって、そしてフラット化によって。

漸進主義。小さい頃から学年をおって、順序立てて、テストに出る範囲をを勉強し良い点をとることをよしとされる。結果、新たな挑戦をする代わりに、期待されることをキチンと行うようになる。

リスク回避。間違えたくないから隠れた真実を恐れる。隠れた真実とは主流が認めていないことだからだ。

現状への満足。社会のエリートは、新しい考え方を模索する自由と能力を誰より持ちあわせているのに、過去の遺産でのうのうと暮らす。

フラット化。グローバリゼーションが進むに連れて、世界を同質的で競争の激しい市場だと見なすようになっていると人々は言う。世界は大きすぎてひとりの力では何も出来ないと感じてしまう。

ティールは同時に、上記が正しくはないということも実例を伴って説く。


他にも、どんなビジネスも答えをだすべき7つの質問であり、彼流のスタートアップ経営に対するいくつものプラクティカルな手法であったりが語られている。彼が正解だという保証はないのだが、実際にその手法で結果を出している人が、具体的にそうしたことを語ってくれるというのは本当に心強いと思う。

最後に印象に残ったフレーズを1つ引用する。

起業は、君が確実にコントロールできる、何よりも大きな試みだ。起業家は人生の手綱を握るだけでなく、小さくても大切な世界の一部を支配することができる。それは、「偶然」という不公平な暴君を拒絶することから始まる。人生は宝クジじゃない。

[書評] 君に友だちはいらない The Best Team Approach to Change the World

留学中に出版され気になっていた1冊。

タイトルも内容もとても良い1冊だ。君に友だちはいらないというタイトルは目をひく。そしてその内容はタイトルを釣りで終わらせない力強いメッセージとそれを支えるファクトで溢れている。

概要は以下。


大きなパラダイム・シフトは世代交代が引き起こす。そのきっかけは若い世代にある。なので第一に、(若者には)そういう世界を大きく変えるようなでかい目標を掲げ、自分の人生を歩んで欲しい。

一方でそれほど大きい目標を1人で達成するのは不可能だ。そこには仲間が必要だ。

ここで言う仲間とは、夢を語り合うだけの友だち、SNSでつながっていいね!といいあうだけのような友だちのことではない。共通の目的の達成のために集う(そして達成した後には当たり前のように解散しそれぞれの道をさらに進む)仲間だ。

そのためには大前提としてでかい目標を掲げそれに身を投じ、それに加えて自分のタグを明らかにして、ストーリーを語ることだ。弱いつながり(ウィークタイズ)を持ち、活用することだ。


僕が最も印象に残ったのは、仲間は見つけるものではなく創るものだ。そのために最も大切なことは、自分自身が成し遂げたい大きい変化の実現に身を投じることだ、という点だ。

自分の目標でありビジョンでありを実現したいと考えるとそれを具体化し、必要なものごとを考える。

そうすると自ずとそれと現実のGAPも明らかになる。それ埋めるためのアクションを重ねる中でうまくいくこともあればいかないこともある。

特に人関係。自分でありものでありは自分の思うように動かしやすいが他人はそうはいかないからだ。それによって思いもよらぬ回り道をすることもあれば、目標の達成事態が遠のいてしまうように感じることもある。

そんなとき、周りを責める、愚痴を言う、自分の置かれている環境を嘆く、といったことはあると思うがそれらはまったく意味がないことだ。

なぜか。

目標達成に対して一切の貢献をしないからだ。目標達成を目指すのにそれに貢献しない行動に自分の時間を割くのは無意味、もしくはその時間を無駄にするという意味でネガティブな価値を持つ。

そこで立ち止まらず、あくまで目標でありビジョンの実現から目をそらさず動き続ける。自分のビジョンとストーリーを語り、自分のもつ(弱い)つながりへも身を寄せ、頼らせてもらう。

自分が本気で、プロフェッショナルとして目標の達成を目指していると周りに映り、その目標が目指すに値するものだと感じる人が現れれっば、自ずと仲間になる。それは筆者がいらないという友だちではなく、必要不可欠な仲間だ。

なので、自分の思い通りに行かない時、置かれた環境がネックとなって目標達成が遠のいてしまうと感じた時に、その環境を責めてしまう、足を止めてしまうようなときは、それを正すと同時に、本当にその目標が自分が人生をかけて成し遂げたいものなのかを振り返ったほうが良いのだろう。

そして、そもそも自分のビジョンの実現に向かってまだ一歩を踏み出していない人は今すぐにそれを始めたほうが良いのだろう。その旅は1人で終えられる程簡単なものではなく、必要な仲間はその旅のゴールと、必死でやり遂げようとしている姿を見て集まってくるのだから。

そして、人生はそうした旅を何度も何度も楽しめるほど長くはないのだから。

 

いくつか印象に残った部分を以下に引用する。

P.31 大きな世の中のパラダイム・シフトというのは、「世代交代が引き起こす」

P.80 人間は合理的に動いていない組織に長期間属していると、物事をロジカルに考える能力が確実に低下していく。そういう組織に順応すればするほど頭が悪くなり、組織に順応することが出来なければ精神を病むことになる。順応しきってしまった人は自覚症状を持つことが出来ないまま、言い訳能力と、自己欺瞞力だけが向上していく

P.101 「よいチーム」はたいていの場合、

  1. 少人数である
  2. メンバーが互いに補完的なスキルを有する
  3. 共通の目的とその達成に責任を持つ
  4. 問題解決のためのアプローチの方法を共有している
  5. メンバーの相互責任がある

という5つの共通点を持つ

P.110 “良き友”が欲しければ、探すのではなく創ればいい。これと思う相手を決めて、一緒に本気で働いてみたらいい。本当の自分を探して雑誌や教材の山に埋もれる前に、本当の友達を探して忙しくパーティを駆け回る前に、とりあえず今いる場所で、今の仲間と一緒に良いチームを創って、目の前の仕事に一生懸命に打ち込んでみたらどうだろう。もしかするとそれが本当の「自分」を見つけるいちばんの近道なのかもしれない。

(上記は『「王様のレストラン」の経営学入門 -人が成長する組織のつくりかた』(川村尚也著)より滝川氏が引用ている)

P.122 つながっている人が自分を規定する

P.181 安易な目標はチームメンバーの心を捉えない。また中途半端な人格者のところには、人は集まらない。外部の人間からの注目も集まらないだろう。
むしろ人は「でかすぎるビジョン」を掲げる、「穴だらけの人物」に注目する。

P.223 不確実な状況のなかでは、自分でいかに必要な仕事を見つけるかが大切となる。(中略)プロの世界で食っていくためには、自分のポジションを必死で見つけなければならないのは当然のことだ。

P.322 夢を語り合うだけの「友だち」は、あなたにはいらない。
あなたに今必要なのは、ともに試練を乗り越え、ひとつの目的に向かって突き進んでいく「仲間」だ。

(中略)

友だちも仲間も他人から「配られる」ものではなく、自分自身の生き方を追求することで、自然にできあがっていくのだ。

だから究極的に必要なのは、他人から与えられたフィクションを楽しむだけの人生を歩むのではなく、自分自身が主人公となって世の中を動かしていく「脚本」を描くことなのだ。

Back to basics -財務3表超入門

厳密には違うのだけど。もともと財務はPLの営業利益までをみるか、プロジェクトや施策の投資対効果を算出するというレベルまでをみるのがメインだったので。

MBAで一連の基礎を一気に学ぶ。会計であれば勘定科目ごとにTアカウントを書き、各トランザクションをDebit/Creditに分けて整理して、最終的にはトランザクションから財務3表をおこす、ということから始めた。

しかし、知ると(実プロジェクトで)使うの間には違いはあり、英語で学んだ結果わかっているようでわかっていないような、ふわっとしている部分もある。

後者を埋めるために日本語の入門書でおさらいをしようと思った次第。

当書籍はわかりやすいことは勿論のこと、筆者がクレアモント大学のピーター・ドラッカー経営大学院でMBAを取得していることもあって、懐かしいドラッカーの言葉もしばしば引用される。彼の一連の書籍は数年前にひと通り読み漁っていたのだが、今、目にしても尚自分を撃つものがある。

資料作成もそうだが、自覚せぬ間に緩んでいた自分の価値基準であり、物事に対するピントのあわせ方でありをしめ直していきたいと思う次第。

Back to Basics -プロの資料作成力

本格的に仕事を始めて1ヶ月強程度が過ぎた。ひとり新しい環境に飛び込み新しい仲間と共に新しい仕事に向かう日々だ。

簡単ではない。そんな中で感じるのは基本の大切さだ。新しい仕事だと言っても、分解して考えれば、これまで経験してきた仕事と学んできた内容の組み合わせでカバーできる範囲はそれなりにあるのだから。

そんな中で気づいたのが、人にメッセージを伝えて動かすという、基本的なコミュニケーションの力、それを支えるドキュメンテーションの力が鈍っているということ。

知らぬ間に身についていた自分の癖も見えてきて、早いうちにもう一度基本に立ち返ろうと手にしたのがこの本だった。

読書が好きで資料作成やプレゼンテーションに関しても何冊も目にしてきているが、当書籍は取り上げるスコープと簡潔さの観点で優れた内容であると感じた。

資料作成の前にターゲットのプロファイリングから説明がなされているし、物語調をとらず各ステップでのgood or badの判定基準が示され、before/afterのsampleで具体的に示されているからだ。

ポジションが変わる毎に周囲からの期待値は変わり貢献すべきポイント、出すべき価値は変わる。

ただそれは、だからそれ以前の基礎をないがしろにして良い、という話ではない。

Back to basics.

今一度基礎を固めて、前に進んで行きたい。