本を読む本

本を読む本
モーティマー・J. アドラー (著), C.V. ドーレン (著), Mortimer J. Adler (原著), Charles Van Doren (原著), 外山 滋比古 (翻訳), 槇 未知子 (翻訳)
素晴らしい本だと思う。
本の読み方について論理的に書かれた本。
まずその本がどのような本であるのか(小説?教養書?等)、著者の意図は何か、著者の問い・答えは何か?・・・という”積極的な読書”のために必要な規則・問いかけを体系的に定義し、4つの読書レベルに分けてステップを追って記述している。
また随所に各”読書”における重要なポイントも記述されている。
例えば、読書は”読む”技術だけで成立するものではない、観察力、記憶力、洞察力、知性の全てを要求するものだ、という話であったり、理解しているかどうかを自覚するためにはその本の要約を”自分の言葉”で語れるかどうか確かめるのが一番だという話であったり。
まさに”本を読む本”だ。
まだ読み途中につき詳細は後ほど。
[2008/3/7 0:12更新]
読み始めて途中までの感想を書いてからずいぶんと時間が経ってしまった。いざ読んでみると内容はたくさんの気づきに溢れており、じっくりと時間をかけて読んでいたためだ。
結果として今もこの本のすべてを吸収しきれたかというと自信がない。
それでも学んだこと、感じたことをまとめておきたい。そしてまた経験をつんでこの本に戻ってきたいと思う。本の中で”もっともすぐれた本の場合は、再開したとき、本もまた読者とともに成長したようにみえるものだ”とあるがまさにこの本はそういう域に達しているものだと思う。
自分が参考になると感じたのは、第4レベルのシントピカル読書と文学の読み方だ。
ちなみに、第1レベルは初級読書。文法を正しく理解してその文章が何を主張しているのかを理解するとかそういった類のもの。
第2レベルは点検読書。その本が何について書かれたものなのか主要命題を理解し、それをどのような構造で主張しているかといった本の構造を掴むといった類のもの。タイトル→前書き→目次→各章の冒頭/最後→後書きといったあたりを流し読みして掴む。
第3レベルは分析読書。時間に制約のない場合のもっと優れた完璧な読み方だと筆者は言っている。まず点検読書をして全体を掴んでから、著者の主張、それを使うために意識して使われている言葉、主張の論証の構造の理解、著者の論証結果の妥当性判断を行う。
で、第4レベルの読書シントピカル読書は何かというと、ある主題に関して、1冊だけでなく関連する何冊もの本を相互に関連付けて読むことである。単にテキストを比較するだけでなく、読んだ本を手がかりにして、それらの本にはっきりとは書かれていない主題を自分で発見して分析するのだ。
そのために5つの段階を踏む。
1. まず関連個所を把握し、
2. 次に著者に折り合いをつけさせる(著者の言葉ではなく、自分の言葉で言うとすれば著者の考えは何であるのかを考える)。
3. そして自分が持っている問いを明確にし、
4. 論点を定め、
5. 主題についての論考を分析する。
全部が同じではないが、基本的に(コンサルタントが)調べモノをする時にする読み方がこれに近いかなと感じる。その場合3から始まるが。
次に文学の読み方。全体的に極めて論理的な読書へのアプローチが展開されているが文学の読み方についても素晴らしい。
・無防備で作品に対する
・文学の中に名辞、命題、論証を求めてはならない
・良い小説の「真実」は迫真性である
・小説に対して、読者は、反対したり賛成したりするのではなく、好きであるかきらいであるかのどちらかだということを、忘れてはならない。「教養書」を批判する場合の基準は「真」だが、文学の場合は「美」であると考えてよいだろう。
・速く読むこと。作品に没入して読みふけること。没入するとは文学に身も心もゆだね、作品がはたらきかけるままにまかせることである。
また経験を重ねて戻ってきたい本だ。

ナイチンゲールの沈黙

ナイチンゲールの沈黙
海堂 尊 (著)
猫田看護師長に学び、最後のアツシくんに涙した。
読み終えた直後は、自分の内側をどのように形容していいのか言葉の整理がなかなかつかない。
どのような言葉で形容しても自分の気持ちをこぼしてしまうような気がしているからだろう。
客観的に1つの作品として客観的に評価してしまえば自分の気持ちをつぶしてしまうような気がしているからだろう。
最近の傾向なので偏っていることは否定しないが、小説を読むということは一種の経験なのだなと思う。ビジネス書を読むことが学習であることと比較して。
ビジネス書を読むときも自身の経験を重ねて読んでいるつもりでいるが、小説が織り成す世界との一体感とはまた異なるのだ。ケーススタディとも異なる。
普段何気なく身を置いているビジネスの世界においても、小説のような、小説よりも色彩鮮やかなストーリーがあることに自分が気が付いていないだけなのだと思う。もっと現実を深く味わう努力をしていきたい。
[2008/03/07 0:35更新]
猫田看護師長からの学びを一部紹介したい。

患者に対する過度の感情移入は危険。共感は大切だけど過度だと、看護が壊れる。

迷った時は患者に返ること。医療の原点は患者にある。

看護は本の中にはない。現場に足をつけることが大切なの。

あたしはね、負けてはダメと言っているんじゃない。負けてもいいの。人間なんて必ずどこかで負けるんだから。だけど怪我をしないような負け方を覚えないと、ね。

間に合わない仕事はやったうちに入らない。

なかなか戻らず

うーん。体調がなかなか戻らない。。。焦って治るものでもないので家でのんびり。
前に既に書いたとおりで、どうにもこうにも頭痛に弱く仕事にも手をつけず。重要×not緊急カテゴリにあるうちにさくさくと片付けておきたいのに。まあ仕方ない。
話は変わるけど、ゆっくりした時間の中でデジタル一眼レフの初心者向けの本を読んで気がつく。
大事なのはこういうノウハウを学ぶことではなくて、自分の中の写真の世界を広げる作品に触れることだと。
根っこにあるべきは、静かか激しいかはさておき、こうしたいのだと強く思い続ける純粋で単純な信念だ。写真であれば自分が表現したい世界なのだろうし、ビジネスであれば自分のビジネス・社会的な存在が世の中であり人々でありをどのように幸せにするのかということだろう。
そういうものがあるからこそそこにたどり着くために頑張る。頑張る中で独力だけではなんともならないときに他人の経験であり既に体系化された知識でありに学び、訓練し、現実の中で試行錯誤して前に進むのだ。
ということでいくつか写真集を買ってみる。著名な写真家の方に詳しいわけではないのでネットで少々調べて、ジャケットで魅力的だと感じたものを(このエントリーの写真はその1つ)。そして改めて気が付く。以前行った写真展の魅力に(そのときのエントリー)。
このブログをご覧の皆様、オススメの写真家の方や作品等あれば是非ご紹介下さいませm(_ _)m
仕事の方は、良い失敗をするところまでスピードを上げて走りたいと思う。そこで本当の理想と現実のGAPに気づいて、心から学ぶことができるのだろうから。

失敗学のすすめ

失敗学のすすめ
畑村 洋太郎 (著)
後ほど。
[2008/2/22 21:50更新]
面白い本だった。
失敗から学べということなのだけど、決して積極的に失敗しろとは言わない。失敗をしないよう最善を尽くしても失敗の確率は0にできないような、未知の領域での失敗こそするべきで、未然に防げる失敗はするなと言っている(勿論失敗の中には人の命に関わるものもあるわけで単純に推奨できるものではないという前提)。
社会・会社組織としての未知の領域での失敗、個人の未知の領域での失敗は、真の学びの機会であり、それを経てそれぞれは大きく成長することができると。
私はこの失敗(期待した結果と異なる結果を得ることとする)から学ぶということは、徹底した仮説思考とリスクマネジメントが役立つのではないかと考えている。
期待する結果(仮説)を明確に描き、それが成り立つためには何がどうなっている必要があるのかを組み立てる。それを検証する過程で仮説と異なる部分があればその結果失敗する。その異なる部分にこそ失敗の原因が潜んでいると考えられ、効果的に学びが得られると考えるからだ。
また、検証活動においては期待通りの結果が得られないことに加えて、検証活動自体が計画通りに行えないリスクがある。発生しうるリスクを把握し、対応をコントロールすることで、悪い失敗(既知の領域のおける不注意等)を排除し、もし失敗するとしても未知の領域の、学びの大きい失敗に近づけることができると考えるからだ。
自分の仕事や日常の中で、どれだけ良い失敗をし、そこから学ぶことができているだろうか。
失敗情報の伝わり方・伝え方を最後に抜粋、一部加筆する(目次より)。こうしてみると目次を熟読することの大切さを感じる。

・失敗情報は伝わりにくく、時間が経つと減衰する
・失敗情報は隠れたがる
・失敗情報は単純化したがる
・失敗原因は変わりたがる
・失敗は神話化しやすい
・失敗情報はローカル化しやすい
・客観的失敗情報は役に立たない
・失敗は知識化しなければ伝わらない
・六項目による記述(事象、経過、原因(推定原因)、対処、総括)

チーム・バチスタの栄光

チーム・バチスタの栄光
海堂 尊 (著)
三谷さんの”観想力”の中で紹介されていたのをきっかけに手にした一冊。amazonにしてもiTMSにしてもそうだがビジネス書等の分野で高いランキングを得ている本で紹介されている本のランクや、音楽でメロディが似ているとうわさになった曲のランクが上がっている。
この本は映画化されたことの方がランキングに対するインパクトは大きいと思うが。
小説は今回久しぶりに手にしたのだけどなかなか面白い。360ページくらいあり、読み終えるのに3-4時間程度かかるのだけど、その世界に没頭できることが気持ちよく、また現実の世界で活かせる学びにも溢れている。
例えば、今回の本で言うと、白鳥の言動から仮説思考を具体的に学ぶことができるし、田口の人間関係の描写から人の機微を学ぶことができる。
学ぶというより感じることができると言った方が適切なのかもしれない。これはおそらくビジネス書からの学びが形式知の吸収であるのに対して、こういった小説からの学びが暗黙知の吸収だと考えられるからだろう。抽象度が高いというのか、何を学ぶのかは読み手次第というのか、そのあたり。
で、学びはさておきと。
病院という世界の組織の壁の高さ、権力への執着の強さ。医師というプロフェッションの持つべきプライド、目的への飽くなき情熱と客観的に事実を踏まえる冷静さのバランス。最高のチームという薄いカバーの裏に潜むひずみ、そのひずみの隙間を縫って動く人間の存在。
人の命を扱うテーマだけに、”面白い”の一言で済ませることができないが、とても素晴らしい作品になっていると思う。
最後に、田口と白鳥、それぞれのキャラクターとそこからの学びを端的に表す言葉を1つずつ抜粋しておきたい。

人の話に本気で耳を傾ければ問題は解決する。そして本気で聞くためには黙ることが必要だ。大切なことはそれだけだ。

大切なのは事実かどうかを証明することではなくて、事実と仮定して物事を動かしていった時に、最後まで矛盾なく成立するかどうか確かめるというやり方をすること。全ての可能性を検討して同時に全てを疑うこと。