螺鈿迷宮

螺鈿迷宮
海堂 尊 (著)
海堂さんの作品はこれまでに3冊(『チーム・バチスタの栄光』、『ナイチンゲールの沈黙』、『ジェネラル・ルージュの凱旋』)を読んできた。今回で4冊目となる。
本作にはこれまで主役として登場した田口先生は”ほぼ”登場せず、変わりに医学部リタイア気味の天馬大吉が主役として登場する。キャラクターはおそらく田口先生の医大生時代といったところか。
登場人物それぞれが過去に抱えている闇と今とのキャラクター個人におけるコントラストや、その過去のイベント前後におけるそれぞれの価値観・そのイベントの解釈、そのすれ違いが生じさせる感情の歪み、そして人生の歪み。
それらが医療という人間の死に近いステージで折り重なり、パズルのピースがつながり全体像が明らかになっていくのと並行して、人の死であり心について考えさせられる。
ストーリーの本質とは異なるが、登場する桜宮病院一族からいくつかの学びを得た。

「人は誰しも知らないうちに他人を傷つけている。存在するということは、誰かを傷つける、ということと同じだ。だから、無意識の鈍感さよりは、意図された悪意の方がまだマシなのかも知れない。このことがわからないうちは、そいつはまだガキだ」

「・・・言わないことや言えないことだって、いっぱいあるのよ。それから、尋ねて欲しいと思うこともね」
(中略)
「相手の言葉を百パーセント信じるということは、その人に関心がないのと同じことよ」

「生きるも地獄、死ぬも地獄・・・・・・死ぬも極楽、生きるも極楽、ま、どっちにしても同じことさ」

「ヌシはこの世から闇を無くしたいのだろうが、闇に光を当てれば、隣に別の闇ができるだけ。光には闇が寄りそう。これは普遍の真実。光が強ければ闇も深い。これまた永遠の真理」

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