遅刻した部下に何を思うか

自分の若かりし頃を思い出す。

プロジェクトの山場では2-3時間睡眠の日が続いたり、時には一睡もせずにシャワーを浴びに家に帰ってすぐまた仕事場へ戻る、そんな生活を送ることもある。

初めてマネージャを務めたプロジェクトでまさにそういう山場があった。若い仲間と一日16時間近くを共にする日々が続いていた。そうして迎えたクライアントとのミーティング当日。

オフィスで朝日を見てから家に帰り、30分程度仮眠をとってから直行する予定でいた。

清々しく目覚め時計を見ると既にミーティングが始まる時間だった。何が起こったのかわからず、顔を洗いスーツに着替えて鞄を手に家を飛び出した。

既に始まっておりパートナーにもメンバーにも電話はつながらない。記憶が定かではないが確か道中でメールを送った。

結果、30分程遅れてミーティングに参加しバトンを自分に渡してもらいその後つつがなく終えた。

ミーティング後、改めてパートナーとメンバーへ頭を下げた。頭を下げるあとはその後のパフォーマンスで、結果で詫びるしかないと思っていた。とは言え、自分の責任を部分的にでも全うできなかったこと、何よりクライアントからのチームでありファームでありへの信頼を損ねた可能性があることは事実だ。

パートナーが最初に口にしたのは自分が想像していなかった一言だった。

”無事で本当によかった”

と。そして本当に心配したと。何を言われても致し方ないし、言葉なく呆れられても致し方ない。そう思っていたところへの一言だった。

涙こそ出なかったが、再度、頭を下げた。

この経験は、自分が仲間をリード・育成する立場に立つときの価値観の一角をつくっているし、大切なことだと思っている。

まずは心身ともに元気でいること。全てはそこからだ。

倒れかけの体、とまりかけている頭、折れかけている心。その状態で何かを投げかけてもそれは響きようがない。相手を痛めるだけだろう。それがどれだけ正しい、価値のある内容だったとしても。