[書評] ZERO to ONE -君はゼロから何を生み出せるか

FacebookのTimelineを不意に流れてきて、気になったので手にした1冊。Peter Thielという著名な起業家のスタンフォードでの起業講義録とのこと。

読み終えて感じるのは、この本の価値は読む人によって価値が大きく変わるだろうということだ。

Start upに関係する人からすればこの本は極めて濃密で学びにあふれている。

起業に対する彼の考えであり、その背景にある世界観・価値観でありは新鮮にしてシンプルだ。それに従って彼が問いかける質問は、同じくシンプルでありながらこたえることの難しい、素晴らしいものだ。その問を得られるだけでも大きな価値だ。

本書の内容はそれにとどまらない。


競争そのものをよしとせず、独占企業について説く。その特徴は、どれも起業する上で考え無くてはならないものだろうと思う。それは、

1. プロプライエタリ・テクノロジー
2. ネットワーク効果
3. 規模の経済
4. ブランディング

の4つだ。

プロプライエタリ・テクノロジーはビジネスの最も根本的な優位性であり、例えばグーグルのアルゴリズムだ。独占的な優位性をもつには少なくとも二番手より10倍は優れていなくてはならないとする。

ネットワーク効果は、利用者の数が増えるに連れて、より利便性が高まる現象を指す。SNSを想像すれば分かりやすい。ここで注意スべきは、ネットワーク効果は強い影響力を持ちうるが、ネットワークが小規模であるときの初期ユーザーにとって価値が有るものでない限り効果が広がらないということだ。簡単に言えば、”規模が大きくなれば”価値がでる、ではだめだということだ。

規模の経済は説明は不要だろう。スタートアップで大切なことは、規模拡大の可能性を最初のデザインに組み込むことだ。

ブランディング。これに関して大切なことは、ブランディングで表面をどれだけ磨いても、そのしたに強い実体がなければ上手くはいかないということだ。

そして、スタートアップが実際に独占を築くためにどうすべきかという点も論じられている。

個人的に特に頷いたのは、”破壊しない”ということだ。破壊にこだわるということは古い価値観でありそれに従う企業にこだわるということだ。それより想像に注力することがはるかに有益だと喝破する。また、破壊は注目を集めやすく、それを大々的に言ってしまう企業は結果として勝てない喧嘩を売ってしまう(例としてナップスターを挙げている)。なので周辺市場に拡大する計画を練る時には、破壊してはならない。できるかぎり競争を避けるべきだ、とする。

多くの人は前例をもってこれを学んでいると思う。


そして0から1を生み出すために必要な隠れた真実を見つけるということに対して、現代はそうすることへの探究心を根っこから摘み取ろうとしていると警笛をならす。それは、漸進主義によって、リスク回避によって、現状への満足によって、そしてフラット化によって。

漸進主義。小さい頃から学年をおって、順序立てて、テストに出る範囲をを勉強し良い点をとることをよしとされる。結果、新たな挑戦をする代わりに、期待されることをキチンと行うようになる。

リスク回避。間違えたくないから隠れた真実を恐れる。隠れた真実とは主流が認めていないことだからだ。

現状への満足。社会のエリートは、新しい考え方を模索する自由と能力を誰より持ちあわせているのに、過去の遺産でのうのうと暮らす。

フラット化。グローバリゼーションが進むに連れて、世界を同質的で競争の激しい市場だと見なすようになっていると人々は言う。世界は大きすぎてひとりの力では何も出来ないと感じてしまう。

ティールは同時に、上記が正しくはないということも実例を伴って説く。


他にも、どんなビジネスも答えをだすべき7つの質問であり、彼流のスタートアップ経営に対するいくつものプラクティカルな手法であったりが語られている。彼が正解だという保証はないのだが、実際にその手法で結果を出している人が、具体的にそうしたことを語ってくれるというのは本当に心強いと思う。

最後に印象に残ったフレーズを1つ引用する。

起業は、君が確実にコントロールできる、何よりも大きな試みだ。起業家は人生の手綱を握るだけでなく、小さくても大切な世界の一部を支配することができる。それは、「偶然」という不公平な暴君を拒絶することから始まる。人生は宝クジじゃない。

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