[書評] 外資系金融のExcel作成術 -説明不要のモデルをつくる

仕事上PowerpointとExcelを使うことが多かった。しかしモデリングの経験は多くなく、Powerpointのように細部にわたるまでの、何を表現したいときにどうすべきか、という基準は持ち合わせていなかった。

MBAでのクラスは勿論、Venture Capital & Private Equity Clubのモデリング講座を受けたりしながら基礎を築いてきた。今回、この本を通して日本語で復習したいと思って手にした。

素晴らしい本であると感じた。自分の経験に照らして、書いてある内容に目新しい物はなかったが、プリンシプルがあり、細部においてもなぜそうしなくてはならないのかが明確に示されている。

当たり前の一言で片付けることもできるのかもしれないが、こうして全てが明文化されていることがまず素晴らしい(本を通じてメッセージするためには当たり前ながら文字を含むビジュアルになっていなくてはならない)。自身が当たり前のように身につけている所作を、自覚し、言葉に置き換えていく作業は思う以上に負荷が高い。

また、究極的には読み手に依存するモデルの品質の担保の仕方についてもうまく説明がなされているように感じた。説明せずに複雑な計算式を埋め込んでしまうと意味がわからなくなる一方で全ての数値を表にしていては冗長になってしまう、その辺りをどうするべきかという点がそうだ。

前半の、モデリングの前のそもそもの表の作り方・Excelの使い方も非常にシンプルにまとまっている。Excelの使い方というのは非常に多岐にわたっており、色々と斬新な使い方を目の当たりにして言葉を失うことも時折あるが、こうした基本的な思想を身につけた人が増えれば、データのやりとりや加工分析はずいぶん効率が上がるだろうと思う。

そして、基本的なデザインに関しては、Excelに閉じず、Powerpointに閉じず、やはり『ノンデザイナーズ・デザインブック』は秀逸であると再認識した。説明を必要としない、アフォーダンスのレベルの高いものをつくろうとした際に、デザインの基礎を学ぶことは避けては通れない。

からだで学んでいきたいと思う。

こうして最低限必要となるモデリング等にかかる負荷を減らせる程、前提条件に反映される事象であり、この数字の裏にある・この数字に責任をもって実現していく人間関係であり、といった一層大切なものごとに対して割ける時間を増やすことができるのだし。