[2/3] 天より火の粉が降り注ぎ地上に花が咲き乱れる街VALENCIAへいってきた – LAS FALLAS Y OFRENDA DE LAS FLORES

インド人の同級生とそのパートナーの方と合流して、お祭りが本格的に盛り上がる前に早めに夕食をとろうという話があった。

その待ち合わせまでまだ時間があったので、最後の夜が始まるに際してパレード?があるようでそれを見に行った。

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まだお祭が本格化する前にして、それはもう僕の想像の及ばない様相を呈し始めていた。パレードの一角が見えたと思ったらもう辺り一面煙と火薬の匂い、少し遠くには宙を舞う数々の花火が見えた。

そしてパレードを見る人の群れに辿り着いた。遠くから見えていた火花が何であったのかを理解した。幸か不幸か、僕らの立ち位置の辺りでちょうど花火が消え始めるようで、火花のボリュームは小さかった。

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その後無事合流し軽くご飯を済ませる。その間に小さい張子(Falla)への点火がスタートしたようで外からは一層多くの爆竹の音と人のざわめきが聞こえてきた。そんな喧騒から一歩離れて談笑しながら飲んだビールはとても冷えていて美味しかった。

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外に出て、僕たちは今年最大のFalla(という話だったと思う)が燃えるのを見ることに集中しようという話になった。これまで見て来たように多くの張子があり、フィナーレを飾る会場も別にあるのだが、街はもはやそれらを時間内に移動できる状態にはなかった。

向かう途中目にしたのは既に姿を失った小さいFallaであった。こうなってしまうのか、と喧騒の中にあっても一抹の寂しさを感じた。こんなにもキレイになくなってしまうものなのかと。(奥の大きい張子はもっと遅くに燃やされる)

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そして炎を上げている小さいFallaも目にする。諸行無常を感じた。

加えて、こんな狭い所でこの大きいのもこの後燃やされるのか・・・周りの建物は大丈夫なのか、この距離で見ていても大丈夫なのか、等いくつかの不安が頭をよぎった。

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その炎が消えゆく様を静かに見ていたいという気持に後ろ髪をひかれつつ、僕らは今年最大のFallaのもとへ急いだ。

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そしてそれを目の当たりにした時に僕が感じたのは2つのことだった。1つはその大きさと構造の手の込み具合の凄さに、そしてもう1つはこのサイズのものをここで燃やしたら周りの建物はどうなってしまうんだ、ということだった。先ほど頭をよぎった不安であったが、いよいよどうなるんだろうと。

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このFallaに火を点すまでまだ時間があったので極力前方に陣取り待っていた。頭の中に、夕方に合流した仲間から聞いた、昨年この祭りに参加された方の声が頭をよぎった。

燃え上がる張子の炎は想像以上に熱く近くで佇んでいることは不可能だった。そして燃えた火の粉が上空から自分達に降り注いでくるため非常に危険だった。

己を守るために、自分しかいなかったが、カッパを着ていた。

この大きさにしてこの距離でいいのだろうか。もし熱かったとして、距離をとろうにも後ろには満員電車さながらの人人人。距離をとれるのだろうか。ただ、カッパは持っていないが周りの人も持っていないし、それは大丈夫なのだろうと思っていた。

ちなみにスペイン語が堪能な同級生が周りスペイン人の方々から聞いた話によると、これは風刺を含んでおり、各キャラクターが欧州の政治家をイメージしてつくられているとのことだった。

そうこうしているうちに、日帰りのバスツアーで来ると言っていた同級生を互いに発見。写真に収めた。ピンぼけを防ぐことはできなかった。

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点火予定時刻は24:30。その時になると人々のざわめきもいよいよ大きくなる。点火前にFallaの目の前で取材をしていたTVリポーターの方へは明るく、大声で”はやくどけ”コールがなされる。怒った雰囲気の一切ない明るさが好きだ。

そんな中で僕は驚いたことがあった。自分たちの前には数人の若者がおり、とてもカジュアルな格好でお酒を飲んで談笑しながら待っていたのが、点火が近づくと、おもむろにフードをかぶり、ジッパーを閉め、首にしていたバンダナを口を覆うようにして巻き直したのだ。

未経験ながら、カッパがあったらよかったんじゃないかと思った。遂に僕の想像力でも昨年参加者の方の気持ちに手が届く状態に至った。

が時既に遅し。

照明が落とされる。導火線に火が点され火花がチリチリと小さい音を立てて動く。

まずは点火前のセレモニー、打ち上げ花火だった。幸か不幸か無風だったため真上に上がり、火花が真下に、即ち自分たちの下に降り注ぐ。

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 花火が終わり、視点を前に移した時には既にそれは始まっていた。僕はほとんど言葉を発することなく、ただただ目を奪われ、シャッターをきっていた。

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最小限の消火も同時に行われているようで、結果、大粒の火の粉や灰と小雨が同時に自分たちに降り注ぐ事態となった。怪我はなかったが気がつけば全身煤けていた。

確かに熱かったが身動きがとれなくなるのではというのは杞憂であった。なぜなら気がつくと人の群れごと後ずさりしていたからだ。

全員煤けながら一足早く人混みを抜け、フィナーレの会場へ向かうことにした。大きいFallaに火を点け始め、こうして燃え盛っている時間帯は、不思議なほど街は静かで、人の動きもまばらだった。

ただ、街の幾つもの場所で狼煙が上がっているようで、空の赤い方角もあれば黒煙の立ち上っている所も見えた。その様は、僕に、これが祭りであることを一瞬忘れさせた。

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メインの会場は既に人に埋もれていて近づけない状態だった。ただ、その会場についた時に僕達全員が驚いたのは、遠くに立ち上る巨大な火柱でも、けたたましい爆竹の音でも、打ち上げられている数々の花火でもなく、その人混みの中で掲げられているスマートフォンでありデジカメでありといったガジェットの多さだった。一方でどの角度からならフィナーレがうまく見えるか場所を探しており、そうこうしている間にそのガジェットの多さが表せる写真を撮れていないことが心残りだ。

最後にはこれまでに見たことがないほどの高さ、そして近さで火の粉が舞う姿を目に焼きつけ、帰途に着いた。

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爆竹の音もいくらか落ち着き、人混みもまばらになった帰り道になって初めて、少し高揚感こそあれど、静かに燻る炭になったFallaを見て、心を落ち着かせることができたような気もしなくもない。

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フラットに戻って軽く飲み、学生らしく色々な話をしてそれぞれの寝室へ戻って行った。フラットの明かりの下で、それぞれがいかに自分たちが煤けていたかに気づかされて笑った。

祭りに関係ない話になる。寝る前、僕は心地良い疲れと眠気を感じながらおそらく人生で最も大きい類であろう勘違いに気づき、こんなことが現実にあり得るのか、とまさに狐につままれたような気分で眠りに落ちていった。

次の日、この祭りとは異なるバレンシアの顔を見ることになる。

-つづく-

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