チーム交渉でどんずべって反省した5つのこと

交渉のクラスはもう後半に移り、チームでの交渉をケースを用いて何度かやっている。初めてのチームでの交渉は散々だった。

ランダムでチームが発表され、準備に15分程度、実際の交渉に50分程度を使う。僕は交換留学でIESEに来ている2人とのチームだった。

自分たちにとって理想の条件は何か。譲歩できるのはどこまでか。譲歩する場合それと引き換えに相手から引き出すべきものは何か。相手に譲歩を迫るのはどこか、そのロジックは何か。最初のオファーは何にするか。と言ったあたりを話して交渉のテーブルについた。

結果は合意に至らず。また交渉の質も非常に低いものにとどまった。

テーブルに着いて早々に始まったのが互いの立場の主張のしあい。自分たちは優位であなた方は劣位での交渉なんですよという主張のしあい。

その後互いのオファーを確認しようとするも、1つ条件を話す度にそれは受け入れられる/られないというリアクションが即座に入り、それはなぜだ?どうだこうだというなし崩し的な議論に入りオファーはうやむやに。

結局互いのオファーの全容がテーブルの上に載ったのが交渉開始30分後であった。なぜか仲間のひとりがオファーの一部を現実的でない程強気な数字を主張し議論は紛糾。なんでその値なんだ?と突っ込まれると満足にこたえられず、それでも曲げずただこれが自分たちのオファーなんだと突っぱねるにとどまる。

相手は半ば呆れ、互いに合意点を見いだせず、散らかった状態でタイムオーバー。驚いた。

自分の反省は仲間を否定してでも遮ってでも交渉を進めるよう強引に話をしなくてはならないという点。限られた時間で交渉条件(ケース)を読み込んで準備するので自分の詳細の理解に不安があり結果堂々と主張できないことがあるが、そこは開き直って言うべきだなと。

それに加えて反省したのが次の5つの点だった。自分もできていないものもある。意識的に練習を続けたい。

  1. 人の話を聴いて、聴いて、そして聴け
  2. 会話の構造を崩すな
  3. 沈黙を怖れるな
  4. 自分の感情と非言語コミュニケーションを制御しろ
  5. 常に論理的、合理的であれ

1. 人の話を聴いて、聴いて、そして聴け

上記の通り、この交渉においては両チームとも相手の話を聴き切れなかった。口を開く時間のシェアが交渉の優劣を決めると言わんばかりにお互いに主張し続け、両者の最初のオファーを言い終わるのに30分を要した。この時間の使い方ではまとまるものもまとまらない。

交渉中に際して、できるだけたくさん量を話そうという心構えは要らない。一方できるだけたくさん量を聴こうという心構えは大切だ。そうして得られた情報が交渉を前に進める材料になるのだから。

交渉の時間は有限だ。だからこちらが話す時間が短くなるほど相手が話す時間、こちらが聴く時間が長くなる。逆に、自分たちが長く話し続けることは相手の話に聞く耳を持っていないというシグナルになる。その結果、相手も負けじと長く話そうとする。往々にしてそういう場合は無意味な主張の応酬になりがちで、価値ある情報は表に出てこない。そうして交渉の場は混沌を極める。

聴け。目的に照らして意味を持たない言葉は口に出すな。そんな暇があったら相手の話を聴け。

2. 会話の構造を崩すな

この交渉においては、互いが互いの質問に答えずに自身の主張を繰り返すシーンが散見された。積み上がることのないただの言葉の投げ合いで時間を浪費した。交渉がまとまる理由が見当たらない。

もし質問を投げかけられたら直接答えるべきだ。嘘をついたり、質問に関係ないことを話して質問をうやむやにしたりすべきではない。そしてもし質問を投げかけたのならば、相手が答えるまで動じずに質問を繰り返すべきだ。もしそれらの質問が、その交渉をより良くするものであるならば。

もし投げかけられた質問がその類のものだと感じられない場合は、そう思うこととその理由を明確に伝え、質問の意図を問いただせば良い。その答えに納得がいかなければ、率直にそう伝え議論を前に進めれば良い。

質問を宙ぶらりんにするな、両者の口から発せられた言葉をほったらかしにするな、全てを交渉の目的に照らして整理・解釈し、不要なものはテーブルから降ろせ。会話の構造を崩すな。

3. 沈黙を恐れるな

この交渉においては両者の言葉がかぶさる事こそあれ、沈黙はなかった。チームでの交渉であるので誰かが話しているうちに他者が考えるという役割分担は勿論ある。しかし双方ともそれが機能しているようには見えなかった。むしろ沈黙が生まれようとするとその部屋にいる人間の間に、誰かが話さなくては、という空気が生まれていたように感じている。

複雑な交渉であれば、多少の沈黙はあってしかるべきだ。そして沈黙は、交渉に直接関係のない、意味をもたらさない、交渉の構造を崩すような言葉を発するよりずっと価値のあることだ。

必要があれば堂々と沈黙するべきだ。そして相手の沈黙も許容するべきだ。もしそれが長すぎたり、相手が何か迷っているように感じられたならばその時はそれを解消し話を前に進められる助け舟になるような質問であり確認でありの言葉を投げかけるべきだ。

そして、もし相手がこの考え方に則って動くく場合、こちらからの助け舟になるような質問や情報を待つために沈黙することがある、ということを考慮に入れておくべきだ。相手の沈黙の意味や目的に思考を巡らせるべきだ。

何はともあれ、必要な場合は堂々と沈黙するべきだ(チームであれば休憩をとって話し合うというのも1つの方法だ)

4. 自分の感情と非言語コミュニケーションを制御しろ

この交渉においては、どちらが先かは忘れたが、どちらかが優位に立とうと事実を自分たちに優位なように解釈し相手を下げる発言をした結果、それに反射的に他方が応じ、同じ手法を用いて相手を下げようとするという動きとなった。このやりとりは不毛だ。

最悪なのは心の平静を保てず、自身の感情のコントロールもできずむしろ感情にコントロールされることだ。それであれば自身の感情を殺すか、生じる感情と自分のとる行動を切り離した方がまだ良い(簡単ではないのだが)。良いのは、交渉の状況に応じて自分の感情をコントロールし、活用できることだ。そしてその時には非言語コミュニケーションが力を発揮する。

自分がどの段階にいるのかを測るのは簡単だ。例えば交渉やコミュニケーションにおいて、自分が怒っていると感じた時に、”自分はなぜ今怒っているのか?”と問いかけてみれば良い。

もしその答えが交渉やそのコミュニケーションの目的達成に明確に関連付けられていたら問題ない。感情を活用できている。(何のために怒ったほうがいいかを考えてその通り動けていれば、それは感情をコントロールできているということだ)

もしその答えが、相手が自分を怒らせるようなことをしたから、という類のものであったら感情の活用もコントロールもできていない。

もし答えに窮する、もしくは問いかけることもできない(怒っていることの客観視もできない)のであれば、自身の感情の認識さえできていない。

人間は少なからず感情に左右される。その感情を活用しない手はない。

5. 常に論理的、合理的であれ

この交渉においては、冒頭に書いたように、説明責任を果たせない非現実的な要求をしたことで信頼関係を崩し、交渉の成立を阻害した。自分が出す要求には常に十分な論理、合理性を備えていなくてはならない。それができなければただの”だだ”だ。

もし感情をコントロールし活用できたとしても、その感情を活用して相手にメッセージしている内容が論理的でも合理的でもなければほぼ無価値だ。感情的なふるまいに影響を受けなびく人もいるとは思うが、ビジネスの交渉の場では極めて限られるだろう。そうできない力学が働いているから。

感情はメッセージを届けるチャネルのひとつの属性に過ぎない。感情自体があなたの論理であり合理性でありを補足することは決してない(上記の通り相手に見えなくさせる、無視をさせることはあるのかもしれないが)。

これは同時に、交渉相手がどれだけ感情的になっても、感情を上手く活用したコミュニケーションをとっていても、あなたはその感情が付属している論理そのもの、合理性そのものに対する焦点をぼかすべきではないということを意味している。従って、例えば、論理性、合理性を十分に備えた内容を、相手への共感を添えて返すべきだ。もし相手が論理、合理を欠いているのであれば、感情を汲みとりながらその旨を明確に伝えるべきだ。

 

実践とその振り返りを毎回できとてもためになるクラスだ。研鑽を続けたい。

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