あなたの中のリーダーへ

あなたの中のリーダーへ
西水 美恵子 (著)
2009年の5月21日頃に『国をつくるという仕事』を読み感銘を受けた。それからほぼ丁度3年。西水氏の新刊である当初を手にした。こちらは2008年4月ー2012年3月に『電気新聞』の「時評ウェーブ」にて連載されていたコラムに加筆修正を加えまとめられたものとのこと。
前著にも増して胸であり、時に目頭でありを熱くさせるものだった。これは西水氏が自身の考えであり気持ちでありを行動に移し、結果を出してきた過程そのものが書かれているからだと感じる。この本の中に理論や西水氏が自身の経験を体系立てて何かを語ることはない。ただ、西水氏が何を感じ、何をし、どういった結果がでたのか、そしてそこから何を思うのかという話が連なっている。コラムをまとめているので当然短篇集の形をなしているのだが、1篇1篇が濃密だ。線を引き書き込みながら読んでいたらきりがなくなってしまうと感じつつ、ところどころ線を引くのも忘れて読みふけってしまったところもある。そして、読者に対して何をメッセージしているわけでもないが、読者としては心を奮わさずにはおれなくなる。これは西水氏が語りかけずとも、行動する彼女の背中がそう感じさせるのだと思う。
この本の中で自分がキーワードとして受け取ったのは”本気”という言葉だ。泣くも笑うも悩むも憤るも、この本に記されている西水氏の行動のすべてが”本気”だったと感じさせるからだろう、彼女が口(文字)にする”本気”という言葉が重く伝わってくる。そしてそういう彼女だから、”それはまだ本気ではないのではないか”という問いかけもまた重く伝わってくる。
この場で言葉を尽くしてどうこうという話ではない。自分が成すべきと信じる行動はすべて本気でやらねばと思うし、そういう行動であれば自然と本気になるものであり、そうなれないものは本当に自分がなすべきと信じているのか自分に問わねばならぬと思う。
印象に残った言葉を一部、以下に抜粋する。

P.24
「腹の底から信じた」ら、情熱という名の力が湧く

P.37
組織文化は組織の人間がビジョンと価値観を共有すれば変わるというのが、経営学の常識らしい。が、ただそれだけでは、組織文化などびくともしない。人間、頭でわかっていてもハートにつながらなければ動かないからだ。

P.98
 企業や役所等、諸々の組織がビジョンを掲げ一般公開するようになってきた。良い傾向だが、いくら読んでも肝心のビジョンが見えないことが多い。生意気だが、つい本気かしらと疑ってしまう。
 媒体手段が文字であr、信念を持って書けば、言葉が絵になる。組織を成す人々が一丸となって作成し、深いところで共有して追求するビジョンなら、読む人に感動を与える絵になるはずだ。
 人間、感動なしでは本気で動かない。本気で動かぬ人間の組織に、ビジョンを追求し続ける変革は、在り得ない。

P.109
 世銀の株主は加盟国の国民だから、本気で国民の視点に立つ努力をするのが当たり前。本気なら、生活に影響を与える国家政策のすべてが横につながっているのがすぐ見える。国民の生活が、財務、厚生労働などの省庁別に縦に区切られる好都合など、あるはずがない。