選ばれるプロフェッショナル

選ばれるプロフェッショナル ― クライアントが本当に求めていること
ジャグディシュ・N・シース (著), アンドリュー・ソーベル (著), 羽物 俊樹 (翻訳)
自分の仕事を振り返る上で触れておきたいと思った一冊。個人的には、このタイミングで今年トップクラスの良書に出会うことができたなと思っている(言わずもがな、独断と偏見です)。勿論そう感じるような経験をこの一年自分がしてきたということも手伝っているのだが。昔7つの習慣を読んだ時にも感じたのだけど、内容が濃密でまた訳がうまいと線を引いておきたい箇所が多くなって困る。僕は仕事に直接関係のない本を読むときは目的意識も明確にせず会話するような感覚でじっくり読むのでなおさら。
プロフェッショナルという言葉でありそういわれる職業でありさえもコモディティ化している。でも、そんな状況においても決して他者に代替されることなくクライアントと末永く深い信頼関係を築いて仕事をしている人もいる。そんな、選ばれるプロフェッショナルの行動特性とは何だろう。そもそもその裏にある、クライアントが本当に相手に求めていることは何だろう?というのを解き明かした一冊。
読んでいて気持ちがラクになると共に引き締まる内容であると感じた。自分が意識せずともできていた振る舞いについてはこれでいいんだと思う一助となったし(その是非はクライアントが決めることでこの本さえ正解ではないのだけど)、そうでない部分、甘えていたり意識が行き届いていなかった部分については今後自分を改善する指針になってくれると思うから。
ちなみに選ばれるプロフェッショナルの7つの特質として以下が挙げられている。

1. 無私と自立
2. 共感力
3. ディープ・ジェネラリスト
4. 統合力
5. 判断力
6. 信念
7. 誠実さ

特に印象に残った部分をいくつか抜粋する。

P.50
ひたむきで、忠実で、自分の問題ではなく、クライアントの重要課題に注力する。クライアントのニーズや問題に対応する一方で、常に客観性と誠実さを維持する。この無私と自立こそ、クライアントと顧客とを明確に隔てるものだ。

P.78
多くのプロフェッショナルは、そもそも、クライアントの質問に答えたり、質問を引き出すことさえしようとしない。もともとの提案書や契約にはないことをクライアントに尋ねられると、ぶっきらぼうに「それはこのプロジェクトのスコープ外です」と答えるのが関の山だ。

P.93
目上の者には謙虚に、同等の者には礼儀正しく、目下の者には気高くあるのは義務である。

P.126
彼らは、あくなき探求者なのだ。まわりのにあるものなら何でも知りたいという子どものような欲求を持っている。よちよち歩きの幼児が家中の引き出しの中身をすべて手にしようとするのと同じだ。

P.199-200
・クライアントの前提は、いつも疑ってかかること(略)
・相手に質問する場合は、どう尋ねるか、どのような質問にするかに留意する。(略)多くのプロフェッショナルがバイアスのかかった質問をして、自分たちの考えやクライアントはすでにこう思っているだろうということを反映させてしまう
・クライアントの考えを検証するために、独立した見識を持つ人をみつけよう(略)
・クライアントがすでに革新していることを単に確認するだけのプロフェッショナルにはならないこと。(略)

P.224
優れたプロフェッショナルは強い信念を持っているだけでなく、クライアントを説得することにも長けている。大局的な考え方ができ、なおかつクライアントのために鋭い決断に至ることができても、自分お見解を支える深い信念と、その信念に対するクライアントの支持がなければ、役には立てないだろう。

P.226
結局のところ信念とは、自分自身への信頼であり、自分の能力への信頼である。自分が何を支持するかを知り、これを強く信じていれば、自信が持てるし、説得力も持てる。自信にあふれているからこそ、仲間やクライアントを引きつけることができる。これによって自立と客観性を発揮する強さを持つことができ、優れたクライアント・アドバイザーとしての質が保証される。

P.259
あなたが誠実で、状況が変わっても信念や理念に一貫した行動をとれば、クライアントは安心できる。

P.270
最悪のプロフェッショナルとは、約束ばかりしてまったく実行しない人である。このような信用のギャップが一度できあがってしまうと、挽回するのは不可能になる。(略)「人が約束すると言うことは、他の誰にも制御できない状況に自分を追い込むことである。自信で制御できるのは少なくとも1つだけである。つまり、周囲の事情がどうなろうと必ず達成するということだ」

P.289
(表1. 7つの特質のバランスが崩れるとき)

P.291
我々が研究した偉大なクライアント・アドバイザーは、常に自問している。新に取り組むべき問題に取り組んでいるか。問題を正しく捉えているか。

P.331
「まったく新しいものを感じさせない<無難なプロの仕事>に、私は最悪の軽蔑をおぼえた」
クライアントのためにはいい仕事をするだけでは不十分。クライアントに代わって、大胆かつ断固として行動しなければならない。

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