ノルウェイの森

ノルウェイの森〈上〉
ノルウェイの森〈下〉
村上 春樹 (著)
小説も読みたいなと思って、本棚の一角には小説のコーナーがある。読んだものもあれば読んでないものもある。割合は1:9位だ。その中の1つだったノルウェイの森に手を伸ばす。生活の中で仕事のウェイトが大きくなると仕事に関係ない本を読みたくなるというのは良くある話だと思う。読書に投入する時間を削っていたのだけどこの手の本は気持ち的にも内容的にも読みやすくていい。時間もさほどとらないしアウトプットを考える必要もない。
この本はとても自然な本だったと思う。本の中で何かしらのメッセージを明確に伝えるとか、ストーリーを完結させるというよりは、ここに登場する人物の人生の一部を時間軸で切り取って本という形にまとめた、と感じたからだ。当たり前なのだけど本の中で完結というか何かしらの結果が出る部分もあれば出ない部分もある。
そしてこの本はとても繊細な本だったと思う。精神のバランスを崩して治療を必要とする人間もいればそうでない人間もいるのだけど、それぞれの内面の描写がとても細やかに感じたからだ。紙一重というか。そしてそれをこれだけ文字で表現できるというのは素晴らしいと思う。
違和感なく世界に入ることができたような気がしている。
印象に残った部分(ストーリー関係なく)を一部抜粋。

上 P.67
だから読むのさ。他人と同じものを読んでいれば他人と同じ考え方しかできなくなる。そんなものは田舎者、俗物の世界だ。まともな人間はそんな恥ずかしいことはしない。

下 P.189
「自分に同情するな」と彼は言った。「自分に同情するのは下劣な人間のやることだ」