くらやみの速さはどれくらい

くらやみの速さはどれくらい
エリザベス・ムーン (著), 小尾 芙佐 (翻訳)
[2/18 00:23 update]
こちらのブログで紹介されていたので手にした。5-6年前になるだろうか。『アルジャーノンに花束を』を読んでいたので、それと比較されているこの本も読みたいと思い。
読み終わると複雑な気持ちになる。それは物語の終りを迎える主人公にとっては幸せであっても、その過程にいた彼なら、その周りで過程に存在した人間なら、幸せだという気持ちだけを抱くことはないんだろうな、という状況が発生するからだ。終りを迎える主人公はそういった過程を忘れいているのか、わかっていてもスッキリ解釈・受容し終わっているというか、そこに至るまでの段階を一気に飛ばすか済ますかしてしまっている(周囲がそれから受容しなくてはならない、主人公との関係を変化させなくてはならないというのに)からだ。物語の最後に至るまでの過程における主人公を、彼の悩みや思考を理解・共感していくにつれて、そんな彼でいることが彼らしさであり、1つの幸せであるのではないかと思ってしまうからだ。
一歩ひいてみると、描写、特に主人公の内面の描写が秀逸。彼の心の機微、彼ならではの迷いや思考が細やかに描かれている。

コメントを残す