カリスマが消えた夏、経営の未来2/2

カリスマが消えた夏―成長戦略を導く七つのイノベーション・シート
IBMビジネスコンサルティングサービス (著)
企業が継続的にイノベーションを起こすことができるのは、(カリスマ)経営者や、一部の限られたタレントを持つ人間のおかげなのだろうか?彼らに依存することなく継続的なイノベーションはありえないのだろうか?
それらの問いに対して、7つの切り口から答えている一冊。どの切り口からでも読めるように本が構成されている。切り口同士は各章の最後にナビゲーションがついている。
7つの切り口とは、

1. Business Pertner Value
2. R&D Resource Channel
3. Ideation Process
4. Incubator Process
5. Business Process Management
6. Human Capital Management
7. Business Producer

それぞれファクトを積み上げてどうするべきだというようにカチッとはかかれていない。全体に物語調で、時折IBM等の事例を織り交ぜつつ、文章として理解しやすく書かれているように感じる。なので、理論であるとか、定量的に裏付けられた内容を求める人にとっては物足りない。
一方で7つの切り口それぞれから、クイックチェック → 本文 → おさらい(関連章へのナビ)と書かれているので、ざっと見て自社の課題を見つける、整理するには使いやすい一冊であると思う。
個人的にはこの本の裏にある思想というのは、『経営の未来』の中でハメルが主張していた内容、経営管理のイノベーションとでも言おうか、に近いと考えている(当ブログ関連エントリー・・・まだ書きかけだった(^^;))。
かつて企業はやるべきことが明確だった。そして定期的に戦略を見直して実行するサイクルを繰り返すことで存続・成長というのは基本的に実現するものだった。やるべきことを抜本的に変える必要も少なかったので、基本的に製品や機能で組織をわけ、それぞれのやるべきことをしっかり定義し、そのスコープの中で生産性を高めればよかった。戦略を見直す役割等は経営者とその補佐(経営管理・企画室)が担えばよかった。勿論その数字を精度良くリアルタイムで集める/分析する/分析結果からアクションに結びつけるスピードを上げるといった工夫は随所でなされてきたが。
それが時代が変わった。簡単に言えば不確実性が上がった。
世界的に(勿論まだまだ格差はあるが)生活の質があがり、欲求が多様化・高度化した。ITの進歩などによって企業がそれらを昔以上にセンスできるようになった、また企業がその欲求を満たす(新たに生み出す)ための手段も多様化・高度化した。それらの結果だろうか(政治等の事情もあるのだろうか)。
結果、過去の経営管理(やるべきことが明確だった前提での経営管理)では対応しきれない。舵を取りきれない事態が発生し始めた。そもそもその通りやれば企業が存続する・成長するという戦略が描けない/描くのに多大な時間とリソースがかかる。描く途中でも時代は変わるし、描いても実行しているうちに想定の範囲を超えた変化をもたらすような要因が現れることもある。
そんな中戦略を基軸にしてスコープを細分化して専門性を上げた組織では対応しきれない。だからといってこれまで組織の壁をまたがずにやってきたところがいきなり自発的・有機的に動けるわけでもない。
でもここで気付く。企業体がそのような仕組みであってもその中にいる人間は進化していると。その組織の枠組み無しで人間は活動できないという前提は外すことができるのではないかと。
企業内での役割の壁なんていうのは取っ払ってしまって良いのではないか。各組織のスコープをまたぐ/超える目的関数を背負った人間がもっと増えて良いのではないか、彼らのコラボレーションを促進するような仕組みがあってもいいのではないか、いきなりでかい成功を狙って一歩も動けないよりはその敷居を下げて長期的な企業の成長のために動いても良いのではないかと。
(極論すれば)やってみないとわからないのなら、小さくともスピーディにやって、先があるか無いか見極める仕組みがあっていいはずだ、そこに関わるのは何も一部の限られた人間である必要もないはずだ、企業の中にはその組織の一つのボックスに収まりきるようなcapabilityしかもっていない人間なんていないはずなのだから。一部の役割を担うボックスに納まった人間にだけそれを任せるのではなく、もっと幅広い人間の叡智を結集しようと。
また企業や物理的な距離をゼロにしてしまう手段も生まれている。Web2.0(もはや死語だろうか)と表現される世界では少なくともビジネスなどの限られた分野においてそういった距離はなくされている。
更には企業の壁さえもなくしていいのではないかという部分もある。R&Dだったり、Channelだったり、Value Chain上の機能をもっとフレキシブルに分担してよいのではないかと。
これから先、きっと企業の存在意義というのはもっと深く世の中に浸透させる必要が出てくるようになるし、その鋭さ自体が価値になってくるのだと思う(体現しつづける前提で)。
そしてその内外にいる個々人が世の中に対してどのような貢献をしたいのか、自分がいるといないとで世の中がどう変わってしまうのか、もっと言えば自分が今日サボってしまうと、世の中にどういう影響を及ぼしてしまうのかという徹底したこだわりが求められるようになるのではないかと思う。
・・・『カリスマが消えた夏』なのか『経営の未来』なのか、どちらについて書いているのか曖昧になってきてしまった(^^;)(ので経営の未来の2/2の記事の役割も当エントリーに担ってもらうこととする。)
経営管理のイノベーションに関する深い洞察がなされているのは『経営の未来』。
具体的にどういう切り口で経営管理のイノベーションというか、継続的にイノベーションを生み出す企業となれるか、その課題を見つけたい・整理したい時に使いやすいのは『カリスマが消えた夏』。
といったところだろうか。
#本質ではないが、『カリスマが消えた夏』は、一部使われるフォントに違いがあったり、せっかく具体例にイメージを添えているのにそのイメージのグラフィックが若干poorだったりする。・・・惜しい。

友達上京

この土日は高校~大学と同じだった友達が遊びにきた。夜合流してそのまま飲みにいく。場所は適当に探して入る。
大学時代のサークル仲間は、当たり前のように社会人になってからも年に1度は集まって温泉にいったり、それぞれ出張した時にはその近くにいるメンバーに声をかけて飲みに行ったりしている。
社会人になった頃から変わらず、仕事の話はほぼ皆無。避けているわけでもないのに滅多にでてこない。勿論転職のタイミングだったり、何か相談事があるときはでてくるのだけど。後はもう日々の中に時折見つけられるネタの話。学生時代の話。
笑える話もあり、切ない話もあり。なかなか濃い時間だったと思える。
日曜日は銀座の五行へラーメンを食べに行く。食べたのは焦がし味噌。初めての味であり、とてもおいしい味だった。立地も去ることながら店内の雰囲気、スタッフのかたの佇まい・振る舞い、インテリア、食器類、その他サービスに一貫性があり、また食べる側の経験に配慮があるように感じて居心地がよかった。

見た目

先日、髪をきって少々日焼けをしたら誰にも自分だと気付かれなくなったという話を書きましたが、若干伸びた今となっても状況は変わらず。
・チームミーティングでは、”あっ!?新しいメンバーかと思ったよ~(笑)”。
・他のコンサルタントからは、”あれ!?どうしちゃったの?何があったの??”
・すれ違ったパートナーからは、”おおっ!一瞬知らないやつかと思ったよ!前の怪しい雰囲気なくなったけど、賢く見えていいじゃん”。
幾つかの観点で”?”がつくコメントなのですが(特にパートナー)。。。
自分の見た目、それが相手に実際に与えている印象。そして自分が与えたい印象。
日頃から意識しておくことの大切さを身をもって感じるこの頃です。

キャリアをつくる9つの習慣

キャリアをつくる9つの習慣―これが価値を生み出す最新の働き方だ
高橋 俊介 (著)
何がきっかけだっただろうか。気がつけば高橋俊介さんという方の言葉がとても好きになっていた。CareerINQのコラムを読んだことがきっかけだっただろうか。そう思ってみてみるとそれは小杉俊哉さんだった(彼の言葉も好きだ)。なんでだろう。きっかけは忘れてしまった。
今回読んだこの本の感想から遡ってみると、(クリティカルに読んでいるわけではないが)頭の中に違和感が残らないのだ。
”コムズカシイ”と自分が感じてしまうような表現はない。しかし適切な日本語が使い分けられている。ロジックの流れもシンプルでいったりきたりがない。読む気をなくしてしまうような飛躍や矛盾もない。冗長なたとえ話や理論の説明もない。
後は自分の考えが彼の考えに近いというのもあるだろう。ものごとに無駄なものはないと思うし、自分ひとり頭の中で組み立てた理想どおりの人生というものもない、もしあっても味気ないだろうと思う。
この本の中では、満足度の高いキャリアを歩んでいると思われる人が満たしている条件は大きく3つあるというところから始まる。それは、

1. 価値を創造し提供している人
2. 仕事を楽しんでいる人
3. 貪欲に成長している人

そして、そのようなキャリアを歩んでいる複数の人から、彼らの共通の習慣として9つの要素を挙げている。それは、

1. 勝負能力
2. 現場体験
3. ネットワーク
4. 仕事に意味付け
5. 個人ブランディング
6. 相手の価値観を理解する
7. ポジティブに巻き込む
8. 経験と気付きで学ぶ
9. 仕事の言語化、仕事の見える化

最後には高橋さんが考えるこれからのキャリアの条件がある。どの習慣がどのようなものかという詳細はここには書かないが、自分にとって印象深かった部分を幾つか抜粋する。
読み終えてから目次を見ると、目次の構成、表現もとても優れていると思える。

P.9
キャリアに無駄というものはそもそもないといえる。逆に、最初に目標を立てたら、関係のないことは極力排除して、最短距離で目標に到達しようという考え方では、学びと成長の機会が限定されてしまうので、結局痩せたキャリアになってしまう

P.33
ただ闇雲に現場を歩きまわったところで、肝心なものは何もみえないだろう。重要なのは、あらかじめ仮説や問題意識をもって現場に行くということ。それで「あれは、こういうことだったのか」と腑に落ちたとき、本当の気づきや発見が生まれる

P.36
自分の言葉になっていなければ、その言葉には、人を動かすだけの説得力が宿らないのである。(略)自分が得た知見や確信、自分の考えを抽象性の高い言葉で「こうだ」と表現でき、さらに「たとえば」と迫力ある事例で説明できる、これが人を「ポジティブに巻き込む」伝達能力であり、これが自然にできる人のことを、コミュニケーションの能力があるという。

P.46
どんなに布石と投資をしようと、結局は自分が発信した世界観や人間観にふさわしい人しか集まってこないのだ。まさに、人間関係というのは自分自身の鏡だといっていい。
健全なネットワークをつくりたかったら、まずは自分の世界観、人間観をそれにふさわしいものにするのが先だ。そのうえで、自分はこういう世界観、人間観をもっているのだということを、言葉にして広く伝えていくのである。

P.53
顧客自身も気づいていない欲望や欲求を先回りして発見し、「あなたのほしいものはこれですね」と価値を提供できるのが、本当のプロフェッショナルなのである。

P.56
新しい分野や職種に就くことになったときには、この自信がものをいう。たとえスキルや経験がなくても、自分には能力があって、実際にこれだけのことをやってきたのだと思うことができれば、その自信がドライブとなって、「自分ならできる」という前向きの気持ちで臨むことができる。そこで結果を出すと、さらに大きな自己有能感や自己効力感が生まれるという、ポジティブなサイクルが回り始めるのだ。

P.64
プロフェッショナルとサラリーマンの違いはなにかといえば、それは仕事を通じて価値を生み出し、それを顧客や会社に提供することを常に意識しているかどうかの差だ。

P.71
情熱さえあればわかってもらえるというのは幻想に過ぎない。人を説得するのに必要なのは、誰にも負けない熱意ではなく、自分がこの人ならどう思うかという、相手の立場に立ったシミュレーションなのである。

P.106
二十人しかいないNPOにいきなり社員一万人の会社の就業規則をあてはめようとしたところでうまくいくはずがない。ところが、人はそれしか知らないと、平気でそういうことをやってしまうのだ。

P.126
将来どんな能力が必要になるかなど、今の時点でわかるはずがないのである。ただひとつ確かなことは、早くから選択肢を絞り狭い世界しかみなければ、今後絶対に必要になる、変化に対応する能力が育たなくなるということだけだ。人生というのは、想像以上に複雑なメカニズムででき上がっている。そして、デメリットはみえやすいが、未来に活きる本当のメリットはなかなかみえないと思っていた方がいい。

P.132
くれぐれも、途中で諦めないこと。
どのようなキャリアになるかは目標が決めるのではなく、その人の習慣によってつくられるということを忘れてはいけない。

ストレスフリーの仕事術

ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則
デビッド アレン (著), David Allen (原著), 田口 元 (翻訳)