戦略コンサルタントに学ぶ3倍速仕事力

戦略コンサルタントに学ぶ3倍速仕事力
ブリッジワークス (編集), 岡島 悦子 (監修)
後程。
[2008/06/24 00:37 更新]
戦略コンサルを卒業して起業という選択をした11名の方々が紹介されている。3倍速というのは言葉だけで本の内容とはあまり関係ない。ただ仕事のコツ、特に戦略コンサルをしていたからこそ今できてるというようなポイントが、コンサル時代を振り返りながら述べられている。
読んでいて強くメッセージされている(自分に響く)のは、仕事のTipsよりも、戦略コンサルで鍛え上げられた”プロ意識”だ。Tipsは、実際に体現されている方が、実例に即して話をされているのでうなずけるしためになるものが多いが、イマドキの本であれば書いてあることが多かったりする(それでわかった気・できる気になるのは勘違いはなはだしいのだが)。

どのような仕事においても、己の責任においてそれを全うし、「考えられうる最高の成果を目指し続けて努力・研鑽する」姿勢を深く植えつけられた

とにかくあらゆるシーンで私は「自分の付加価値は何か」を徹底的に考えるようになった

こうした、徹底的に、常に最高の付加価値を求め続けて行動するマインドがあってこそ、スキルであり知識でありが活きてくるのだと思う。このマインドでいたら時間にしても頭にしても手足にしても、リソースがどれだけ貴重かということを思い知る。そしたら少ないリソースで、大きな効果を上げることを必然的に考える。だってそれを考えて実行しないと付加価値が上げられないのだから。
論点を明確にして論理的に考える。考える前にはまず大胆であっても仮説を持つ。価値をだすのはひとりだけの仕事じゃない。チームの付加価値の総和を高めるために動く、そのためにメンバーそれぞれにふさわしい領域を決める。自分ひとりではやらないことを決める。やれないと見限って協力するスタンスでことに臨む。
チームプレイやクライアントの心情に思いを馳せるようになるとシンキングやただ集めて整理・分析したファクトだけではどうにもならない部分があるところに気づく。人によってはロジカルシンキングという仮面で自分の人間としての”曖昧だけど面白い部分”を隠していたことに気づく、相手のそういった部分を軽視する、もしくは無視していたことに気づく。心でもクライアントと接する必要があるのだという(一見当たり前そうな)事に気づく。
この本で紹介されているそれぞれの仕事術は、戦略コンサルというプロとして価値を出し続ける過程で、必要に迫られて苦しみながらも必死で生み出してきたものなのだと思う。
時折自分でギリギリだなーと思えてしまうときもあるわけだが、こういった本を読んでいると、まだまだいけると思えてくる。仕事のtipsよりも自分にとって価値があるし、その部分がこの本の価値かなと思える。

第1感

第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい
M・グラッドウェル (著), 沢田 博 (翻訳), 阿部 尚美 (翻訳)
なんとなく面白そうだなと思って手にした一冊。人が意図的に考えをめぐらせる前に生じる”ひらめき”の中身についてアプローチしている。
人の表情のパターン、そこから読み取れる感情のパターン。それらに関する語彙に触れられたことがとても面白かった。もともと人の表情・しぐさ・遣う言葉/早さ/抑揚etc…というものからその人の内側に思いをめぐらせることが好きだったが、この本に書かれているような語彙は知らなかった。表現できていなかった。語彙を知ることでまた自分のアンテナに磨きをかけられる気がしている。
後、仮説構築・検証についてチャレンジを感じた。どれだけ(本人も無自覚の)人の感覚に近づくことができるか。そこまで仮説を張り巡らせて、うまく検証できる方法を考えられるか。
(印象に残った部分は後ほど)

カーライル

カーライル―世界最大級プライベート・エクイティ投資会社の日本戦略
鈴木 貴博 (著)
カーライルについて、マネジメントや当事者へのインタビューをもとに実際のMBOのディールをいくつか紹介している。そこにそもそもPEとは何か、カーライルとは何かといった部分について触れられている一冊。
業務に関する専門的な内容には触れずに、上記を通して”Carlyle Way”を表現している(副題が、The Carlyle Way)。読みやすい。
読んでいる中で自然とコンサルタントというプロフェッションとの違いを探していた。勿論ビジネスモデルが違うし、動き方も違う、必要なスキルも違う。それでもクライアント企業の継続的な成長に資するという観点から見れば重なる部分があるのだと思っている。
最も印象的だったのは最後に引用している平野さんの言葉だ。
ひとりのプロフェッショナルとしての意識と力、そして所属するファーム-プロフェッショナル集団としての信頼関係とチームとして最良のパフォーマンスを出すための取組み。
具体的ではないが、自分の重なりたい姿がまたupdateされるのを感じる。

(ガースナー)カーライル・グループのプロフェッショナルの能力は、金融機関のプロフェッショナルとは違ったものが要求されるというのは事実です。コンサルティングファームのプロとも違います。金融機関はディールを実行に持っていくまではプロですが、われわれは株主としてディールの後3-5年の期間を通じて企業価値を高めていくところまで関わっていく必要があります。コンサルティングファームの人たちも企業価値を高めるためのアドバイスをする能力は卓越していますが、企業価値が本当に高まるよう企業に行動させる能力までは獲得しきれていない。

(安達さん)コンサルタントが第三者的にこうしたほうがいいというアドバイスが経営者の判断には役に立つ。しかしコンサルタントには、実際に経営者に代わって大組織を指揮し動かすだけの執行力は必要とされない。組織を動かすのは経営者の本業である。
もし非常に良いアドバイスをしたとしても、経営者が思い悩んだ末に別の行動をとる事もある。それは、最終的には企業の経営者のリスクであり経営判断である。これがコンサルタントの基本的なスタンスである。
しかし、投資家はそれではいけない。投資をした以上、資金の提供者である企業年金や生命保険などの投資家はリターンを得なければならない。投資家は自らリスクを負いながらリスクマネーを提供しているのだから、その資金を集めたファンドのゼネラルパートナーは経営者の行動に直接責任がある。
だからもし経営者ができないといったら、カーライル人は自分で腕まくりをして経営するくらいの覚悟を持った人間でなければならない。

1つは、投資する企業への経営サポート力を飛躍的に高めることだ。具体的にそれは、経営陣と一体となって経営戦略をつくり込む力であり、それを実行するための組織力の向上やガバナンスの強化を支援する能力である。
2つ目の進化は、案件の創出能力の一段の向上だ。そのためには、個人の人脈に頼るだけではなく、組織的名取り組みが必要である。
3つ目の進化が、カーライルの真のプロフェッショナル集団への脱皮だ。プロフェッショナル組織といえば、一騎当千の人材が、互いに切磋琢磨して実績を積み上げていく場という印象が強いが、実はそれだけでは不十分である。真のプロフェッショナル組織とは、プロフェッショナル同士がカーライルのメンバーであるという強い信頼関係によって結びつけられて、お互いを支援しあって最良の成果を実現できる組織でなければならない。

RE DESIGN

RE DESIGN―日常の21世紀
竹尾 (編集), 原 研哉, 日本デザインセンター原デザイン研究所
「日常」をテーマにデザインのし直し(RE DESIGN)をした作品を集めた一冊。トイレットペーパー、切手、はがき、マッチ、ライト、クレヨン(色)、0歳児の絵本、スタンプ、新聞、名刺、シール等、日常に存在するものがBefore、デザイナーの意図、Afterと並べて綴られている。
見ていて感じたのは、デザイナーの意図そのものの斬新さもあることながら、デザインと機能のバランスを、込めた意図に対して絶妙に保っているところだった。斬新なデザインの理由を、デザイナーは全て語ることができている。なぜその対象なのか、なぜその素材なのか、なぜそのかたちなのか、なぜその色なのか。
その理由、デザイナーの意図の裏には自分の主張だけでなく、ユーザーの利用シーンがあり、具体的な経験から得たインスピレーションがある。
ビジネスをデザインする上でも学ぶことは多い。