カーライル

カーライル―世界最大級プライベート・エクイティ投資会社の日本戦略
鈴木 貴博 (著)
カーライルについて、マネジメントや当事者へのインタビューをもとに実際のMBOのディールをいくつか紹介している。そこにそもそもPEとは何か、カーライルとは何かといった部分について触れられている一冊。
業務に関する専門的な内容には触れずに、上記を通して”Carlyle Way”を表現している(副題が、The Carlyle Way)。読みやすい。
読んでいる中で自然とコンサルタントというプロフェッションとの違いを探していた。勿論ビジネスモデルが違うし、動き方も違う、必要なスキルも違う。それでもクライアント企業の継続的な成長に資するという観点から見れば重なる部分があるのだと思っている。
最も印象的だったのは最後に引用している平野さんの言葉だ。
ひとりのプロフェッショナルとしての意識と力、そして所属するファーム-プロフェッショナル集団としての信頼関係とチームとして最良のパフォーマンスを出すための取組み。
具体的ではないが、自分の重なりたい姿がまたupdateされるのを感じる。

(ガースナー)カーライル・グループのプロフェッショナルの能力は、金融機関のプロフェッショナルとは違ったものが要求されるというのは事実です。コンサルティングファームのプロとも違います。金融機関はディールを実行に持っていくまではプロですが、われわれは株主としてディールの後3-5年の期間を通じて企業価値を高めていくところまで関わっていく必要があります。コンサルティングファームの人たちも企業価値を高めるためのアドバイスをする能力は卓越していますが、企業価値が本当に高まるよう企業に行動させる能力までは獲得しきれていない。

(安達さん)コンサルタントが第三者的にこうしたほうがいいというアドバイスが経営者の判断には役に立つ。しかしコンサルタントには、実際に経営者に代わって大組織を指揮し動かすだけの執行力は必要とされない。組織を動かすのは経営者の本業である。
もし非常に良いアドバイスをしたとしても、経営者が思い悩んだ末に別の行動をとる事もある。それは、最終的には企業の経営者のリスクであり経営判断である。これがコンサルタントの基本的なスタンスである。
しかし、投資家はそれではいけない。投資をした以上、資金の提供者である企業年金や生命保険などの投資家はリターンを得なければならない。投資家は自らリスクを負いながらリスクマネーを提供しているのだから、その資金を集めたファンドのゼネラルパートナーは経営者の行動に直接責任がある。
だからもし経営者ができないといったら、カーライル人は自分で腕まくりをして経営するくらいの覚悟を持った人間でなければならない。

1つは、投資する企業への経営サポート力を飛躍的に高めることだ。具体的にそれは、経営陣と一体となって経営戦略をつくり込む力であり、それを実行するための組織力の向上やガバナンスの強化を支援する能力である。
2つ目の進化は、案件の創出能力の一段の向上だ。そのためには、個人の人脈に頼るだけではなく、組織的名取り組みが必要である。
3つ目の進化が、カーライルの真のプロフェッショナル集団への脱皮だ。プロフェッショナル組織といえば、一騎当千の人材が、互いに切磋琢磨して実績を積み上げていく場という印象が強いが、実はそれだけでは不十分である。真のプロフェッショナル組織とは、プロフェッショナル同士がカーライルのメンバーであるという強い信頼関係によって結びつけられて、お互いを支援しあって最良の成果を実現できる組織でなければならない。