新たな輝きのために

もう2年と3ヶ月程前になるだろうか。内部のプロジェクトに参画したのだけどそのときのチームメンバーと今も密につながっている。
金曜日はそのメンバーでの新年会だった。そのメンバーで決めたミッションに関する話とそれぞれの現状を報告しつつ料理をつつく。組織もポジションも違うメンバーではあるがこの中ではそういうのは関係なく、時にみんなでバカ騒ぎをして笑い、時に真剣にディスカッションをする。勿論今の仕事の悩み相談もあればこの場で新たな仕事が生まれたりもする。
そこでのやり取りを見ていても、この飲み会を離れて普段の人の動きを見ていても、(勝手なのを承知ではあるが)嬉しくなることがある。
それは、人が新たなステージで頑張っている姿だ。
ステージが変わると、求められる貢献が変わる。そのために協業できるリソースも変わるし結果に対する責任も変わる。
これまで頭を悩ませなかったところについて考え始めるようになる。
勿論初めてだから全てがうまくまわるわけではない。不自然な自分を自覚しながら、試行錯誤をしながら進化し始めることもある。
その過程で本人の自覚の有無に関わらず、私にはその人が新たな輝きを発し始めているように感じる。
そのような瞬間を垣間見られることが嬉しく、その輝きにもっと磨きをかけるところに自分が貢献したくなるのだ。
これが自分がコンサルタントというプロフェッションを選択している理由なのだろうな、と改めて思った。
人であれ企業であれ、時間の流れに関係なく一定の状態を保ち続けることはできない。勿論変わらないもの/変わってはいけないものもあるのだと思うが大なり小なり時間の流れ、周りの環境の変化を捉えて自分も変わる必要に迫られる。もしくは周りの環境に変化をもたらすべく変わる。
変わるのであれば主体的に変化できるように貢献したい。
その変化によってその人・企業らしい、新たな輝きを発せられるように貢献したい。
らしさにジャンプが必要な時もある。そのような変化であれば最初は不自然だったりうまくいかなかったりするのは当たり前だが、そのような過程にくじけることなく輝きを手にいれることに貢献したい。
自分の成長・自分のキャリアデザインというのはあると思うのだけど、それは自分だけをみてどうこう考えるのではなく、そんな自分がいる環境がどうなっていたら心から喜べるのか、幸せを感じられるのか。もっと言えば自分ひとりではなく、共にいる仲間も含めた”自分たち”でどうしていきたいのか。そんな周りとのつながりのあり方から考えていきたい。
一方で、将来はどうあれそこに辿りつくために積み重ねるのは”今”。そして自分ひとりでできることは知れている。今を、そして仲間を大切にしていきたい。
…”たい”だらけになってしまった…。

プレミアム戦略

プレミアム戦略
遠藤 功 (著)
昨年の年末頃だったろうか、プレミアム戦略という言葉を人の口から聞いたことがあったので、その意図や背景を理解したいなと思って手にした一冊。
キーワードが同じだけで意図や背景までわかるのか?という気がするかもしれないが、その方が相当の読書家であり、また知識の吸収⇔活用・進化のサイクルが極めて早いのでもしやと。少なくともその人の意図を理解する一助となるのではないかと。
そんなきっかけはさておき、私個人としては出会えて良かっと思うし内容にも共感する。文章量は多くなく、簡潔にまとめられているので2時間程度でゆっくりと読むことができた。また要点も理解しやすかった。
個人的に共感したのはプレミアムの価値の源泉についてとそして著者のこの本に込めた意志についてだ。それらが改めて自分がコンサルタントとしてどうありたいかを考えさせてくれた。

プレミアムの価値の源泉は、あくまでも「作り手の強烈な主観とこだわり」である。
<中略>
重要なのは、作り手の主観、自分たちが生み出す絶対価値がいかなるものであるかを、じっくりと伝えることである。この「ストーリー・テリング」の品質こそが、「本物」をプレミアム足らしめる分岐点である。

プレミアムとは、ひとことで言ってしまえば「惚れる」ことである。
自分がほれ込んでしまうような商品やサービスに出会えた時、人は五感で「豊かさ」を感じ、幸せになる。人との「出会い」が「豊かさ」をもたらすように、惚れ込むようなモノやサービスとの「出会い」も、人生を豊かにする貴重なアクセントになる。
<中略>
世界の人たちに「惚れられる」ような独自の価値を持つ商品やサービスを提供できる個性溢れる日本企業が増えた時、日本という国自体がより「豊か」になるのではないかと筆者は信じている。

私は新規事業戦略立案~立上げに関するコンサルティングを専門としているが、その中で意識しているのは”そのクライアントらしい”(必要があれば新たな”らしさ”を構築するところから考える)、”そのクライアントだからこそやるべき”、”そのクライアントだからこそできる”ことは何か?というところだ。
これらを考え抜き、実際の事業に練りこむことで”作り手の強烈な主観とこだわり”が構築され、それが自社のビジョンやその事業に込めた自分たちのそしてクライアントのお客様に経験して欲しいストーリーをとして紡がれて語られていくものになる・語るべきメッセージになると考え、本の内容とリンクしたのだ。
勿論全ての新規事業が必ずしもプレミアム戦略をとるということはない。
それでも新規事業の魂の部分には徹底的な自社らしさとお客様への提供価値へのこだわりを持っていたい。
以下に、プレミアム戦略の概要を抜粋する。

プレミアムというのは「差別化戦略」ではなく、あくまで「プレミアム・ニッチ」という隙間を狙う「集中戦略」だ

プレミアムで成功するために必要な3つのパラダイム・シフト
1. 「たくさん売ろう」としない
2. 「カスタマー」ではなく「ファン」を作る
3. 「マーケティング」ではなく「ストーリー・テリング」

具体的な戦略策定における8つの原則
1. 「作り手の主観」こそがプレミアムの命
2. 常に「モダン」でありつづけること
3. 派手な広告・宣伝はしない
4. 飢餓感・枯渇感を醸成する
5. 安易な拡張は行わない
6. 販路を絞り込む
7. 細部にこだわる
8. グローバルを目指す

日本発のプレミアムを成功させるために日本企業がするべきこと
1. 本物の「職人」を育てる
2. 「ストーリー・テラー」を育てる
3. 上場にこだわらない
4. 仕事に「ゆとり」を
5. 「できる」と信じる

#今回はWebを検索したところいい感じのイメージがなかったので本の写真を自分で撮りました(できれば背景(机)の部分を削りたかったのですがやり方がわからず(^^;))

自信と謙虚さと。

最近始まろうとしているプロジェクトのアプローチについて相談を受けることが何度かある。自分が昨年末でプロジェクトに区切りがつき当時に比べて比較的余裕があることも手伝って、時間をとってミーティングをする。
マネージャー、メンバーが集まって相談のポイントを確認してディスカッションに入る。その中でマネージャの方がメンバーに対して語りかけていたメッセージが印象的だった。

「今のやり方ならクライアントが絶対に成功するって心から信じることができるか?」
「不確実性が高いのは誰しもわかってる。その中で自分たちが不安を抱えていてはダメだ。クライアントはもっと大きな不安を抱えているのだ。」
「自分達がこれなら絶対に成功するって信じられるものをつくっていこうじゃないか。」

表面的に聞けば当たり前で終わってしまうのかもしれないが、これは2つの意味で大切なメッセージだと思う。
1つは基本的なことだが、それができなければクライアントと真剣なディスカッションができない。
もう1つは、こう言われることでメンバーが自身の感覚に敏感に反応するようになる。”どこか/何か違う”という曖昧な感覚がどこから来ているのか明確に考えて解消しようとする。妥協せず、困難に屈せずに自分として胸が張れる仮説であり検証結果でありを示せるようになる(特にタフな場面で大切)。
そして上記を満たした上で大切になってくるのは謙虚さだ。
自分として胸が張れるものがあくまで仮説であること、検証されて確からしいとしてもその答えを(さまざまな責任も伴って)背負うのはクライアントであることを忘れず、あくまで謙虚さを持ってディスカッションを重ね、(論理的にも情緒的にも)より良いものへ進化させていくことだ。
自信を持つことは大切だが、コンサルタントが自信を持った論理をクライアントが求めているわけではない。それはあくまでクライアントの頭に訴えかけるものでこそあれ、心に響き、体を動かすために十分なものではない。
ましてやコンサルタントの自己満足に価値はない。
マネージャが語りかけるその言葉・姿勢から、改めて考えさせてもらうことができた。

トップコンサルタントがPTA会長をやってみた

トップコンサルタントがPTA会長をやってみた発想力の共育法
三谷 宏治 (著)
この本を手にした理由は、三谷さんという方の考えに触れてみたいと思ったからだ。そのきっかけは三谷さんが書かれている”学びの源泉”というショートエッセイを読んだことだった。
視点が面白く、文章表現が豊かかかつ柔らかく、ロジックも簡潔。読みやすく面白い文章で、徐々に興味を持ち始めたのだ。
案の定とても読みやすい・わかりやすい。
本の体裁(文字の数・大きさ・スペースの比率)が程よいし、書かれている文章も迷子にならずスムーズに頭に入るように書かれている。内容は三谷さんらしい、この本でのメッセージをまさに体現した独創的な視点から練られており、適切な言葉で表現されている。
この本のターゲットは子供をもつ親なのだけど、子供を持たない私もこの本から学ぶことができた。子供を初めて持つ親なら、子供が幼稚園/小学校に行くのも初めてなのと同様に、マネージャとして駆け出す人にとっては、若手メンバー/中堅メンバーとチームを組むのも初めてなのだ。
そしてこの本の中で言われている、”子供の前に、まず親が変わろう”というのも親・子供の関係に限った話ではない。
論理的に考えること、徹底的に考え抜くことは仕事上基本的な行動の1つになるのだけど、その前提にある事象に対する着想がつまらないものにならぬよう、論理が通るという理由で着想の幅を狭めてせっかくの独創的な発想を抑えこんでしまわぬようにしていきたいと思う(発想力はきっと誰しも持っている。気づかないか、無意識のうちに押さえ込んでいる/無視してしまっているだけなのだと思う)。
そうして将来、これからの時間を生き得られたものを何かしらの形で社会でありなんであり、自分がお世話になったところへ還元することが出来ればと思う。
個人的に印象に残っている言葉をいくつか抜粋する

「曖昧な返事」は、コミュニケーションの放棄であり、思考の停止である。

情報や経験は、ただそれだけでは意味がない。価値ある情報だけを選ぼうとすることも、大した付加価値にはならない。
もっとも大事なコトは、それらの中に潜む「意図」や「真実」を見いだす力であり、その姿勢だ。

「常識とは『自然』ではなく『人為』なのだ」

現実はどんどん移り変わり、あまりに複雑だ。しかし、その混沌の海を渡るのに必要なのは「単純な美しさ」なのだろう。強い組織は必ず美しく力強いビジョンや理念、戦略を持つ。
そしてそのシンプルな美しさを持つ「船」は、素朴な問から創り出される。

実現可能か不可能かはあまり重要ではない。そのビジョンが素晴らしければ、それを実現すべく不可能を可能にすることこそが人生の価値だからだ。

「意識」や「常識」の壁が、ヒトを独創的な発想から遠ざける。
「ありえない!」「ムリ!」と、すぐに思考を停止させないこと。
3回やろう、3倍を目指そう、ちょっとした苦手を克服しよう。その積み重ねこそが大人を、親を、発想の場へと立たせるのだ。

楽しさの中で共に学び、共に問う姿勢こそが、相手を導く最強の手法だ。

今その時から重なる

1/21(月)は仕事を終えてから勉強会メンバー夫婦と食事へ。結婚の話があったり普段の生活の話があったり今の仕事の話があったり将来の仕事の話があったり。あっという間に時間は過ぎていく。
以前、「1日30分」を続けなさい!を読んだ感想の中で、将来のイメージを抱く上で大事なことが2つあると書いた。簡単に言えば明確にすること、柔軟であることだ。
この食事の中で思い出したのだけど、もう1つ大事なことがある。
イメージを抱いた今その時から重なろうとすること”だ。
長期的に将来のイメージを考えると、40代、50代、60代~と考えをめぐらせることが出来る。ただ、大切なのはその将来にたどり着くために重ねていく”今”も理想のイメージを持つことを忘れてはいけないということだ。今を将来に重なろうとし始めるための準備期間せず、重なる努力をし続けることだ。
本当に重なりたい将来のイメージであれば、今すぐにでも重なろうとせずにはいられないと思う。
キャリアや人生計画をトップダウンで考えることが間違っているとは思わないが、トップダウンで考えることが目的になってしまって人間味・面白みの無いキレイなステップで計画を立ててしまってはキャリアであり人生でありにおける大切な何かをとりこぼしてしまう気がする。
長期的な目的・将来のイメージを考えると同時に、今生きている現実をめいっぱい充実させる・その時々で理想の自分に重なりつづける努力をしていきたいと思う。
そしてその理想を、自分がどう振舞えるかという観点からではなく、(自分も含めた)自分が関係する周囲の人や環境がどのように輝けるかといった観点から考えられたらと思う。